まだ85歳なんです
私は中耳感染を起こしやすいので、
予防の薬を常備している。
その薬は、日本に帰省するたびに、
耳鼻科で処方してもらっている。
大型連休が明けた今日、
その薬をもらうため、病院へ向かった。
総合病院では無料のシャトルバスが運行していて、
私の住むマンションの前も通過してくれるからとても便利だ。
それに乗り、病院に到着したものの、
生憎、今日の午前中は休診だと知り、
別の日に出直す事にした。
病院の外で待機しているシャトルバスに乗り込むと、私に続いて、ショッピングカートを引いた年配の女性が乗り込もうとしていたので、私はさっと入口へ向かい、その女性のカートを車内へ持ち上げた。
すると女性は
「あら、ありがとうございます。本当に助かるわ」
と、私に感謝して席に着いた。
その後、杖をついた女性が乗り込み、
カートの女性の隣に腰掛け、
「足がよたよたしちゃって、歩くのが大変なのよね」と言ったのをきっかけに、二人の会話が始まった。
※以下、カートの女性を(カ)
杖の女性を(杖)と記します
(カ)
「私は昔から足が悪かったんですけど、
最近、手まで大変な事になっちゃいましてね。
ところで、お幾つですか?」
(杖)
「94歳です。
92歳までスポーツジムに通ってたんですけどね」
(カ)
「94歳! まあ~、どうしたらそんなにお元気でいられるのかしら?秘訣を知りたいわ~!」
(杖)
「おたくは、お幾つなんですか?」
(カ)
「私はまだ、85歳なんです」
(杖)
「あらっ。私が85の頃は、
一人で旅行に行ってたわ」
(カ)
「まあ、とてもいい人にお目にかかれて嬉しい!
私は13年間、足のリハビリを受けてるんですけど、回復は諦めて、現状維持を心がけてるんです。でも、何回も転んでるから、歩くのが怖くて・・・」
(杖)
「でも、動かなくちゃダメね。
歩かないとすぐに固まってしまう。
私は這ってでも、自分の足で歩こうと決めてるんですよ。あとね、話す事も大事。朝の散歩の途中、庭でバラを手入れしている方を見かけては、『綺麗ですね』と声をかけたり、病院の待合室でも知らない人と一言交わしたり、ちょっとした会話のチャンスをみつけるんですよ」
(カ)
「なるほど。
私も、もともとは人が好きで、
お喋りが好きだったんですけど、
昨年、旦那が亡くなってから、
すっかり喋る事が少なくなってしまいました」
(杖)
「歩くことと、おしゃべりが大事」
(カ)
「今日はいい人とお話できて良かったわ~」
(杖)
「お互いに頑張りましょう!」
私は、二人の後ろの席で、その会話を聞いていた。
二人とも、我孫子駅で下車するらしい。
本来なら、私のマンションは駅より手間なので、
先に降りるはずだったが、運転席に行き、
「すみません、私も我孫子駅で降ります」と伝えた。
駅に到着すると、
また、女性のカートをバスから降ろし、
軽く挨拶をして、その場を去った。
それにしても、
「私、まだ85歳なんですよ」
という言葉が印象的だ。
駅からマンションに向かう途中、
定年退職を迎えたであろう男性たちが、道を箒ではいている。
70代であろう彼らだが、
まだまだ若い大人のように見えてきた。
そして、私の母の年齢を思いながら、
「あ、まだ、82歳か・・・」
高齢者が多い我孫子で生活を送る中、
そんな風に感じてきた今日この頃です。
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