つい、ニュースを追ってしまう理由
バスに揺られながら、
PCで作業をしている途中にふと、
朝、目覚めてすぐ、
夜、眠りにつく前にも・・・
気づけば私は、アメリカのニュースを覗いている。
カナダのトルドー首相に続き、
フランスのマクロン大統領のテレビ演説が放映され、
各国のテレビ局は様々な報道を続けている・・・
正直言って、社会情勢や政治にはさほど関心がなかった私が、どうしてこんなにもニュースを追ってしまうのか。
理由は、二つある。
まずは、25%の関税について。
私は2012年、日本にワインやオリーブオイルを発送する為、小さな事業を立ち上げた。
コロナ禍では、「イタリアから飛行機が飛ばないんじゃないか?」と心配したものの、問題をクリアし、私を支持してくださるお客様にも恵まれた。
だが、コロナが終息の兆しをみせると、
今度は、ウクライナ危機で価格が跳ね上がった。
「世界中が大変なんだから…」と、
この時期が去るのを願っていたが、
気が付いてみたら、シエナには海外からの観光客が溢れるようになった。
そこには、日本人観光客の姿は見当たらない。
コロナが緩んできた2021年の12月の為替は、1€=128円。
しかし、昨日は、1€=159.48円。
約25%のアップだ。
昨年はもっと酷くて、一時期、1€=170円を超える時もあった。
2021年に比べると、33%のアップ。
コロナが明けた2021年、日本のお客様に、€10のワインを1280円とリストに掲載していたが、私の儲けを乗せる事なく、販売価格を据え置いたとしても、ワインリストには、1700円を書かざるを得なかった。
数日前、CNNのニュースで、ロサンゼルスの輸入業者や販売業者が「この価格で、客はついてきてくれるのか?この先、どうしてよいか分からない」と不安気に話していたが、私もその不安を味わった故、彼らの気持ちが良くわかる。
情報は参考にはなるけれど、現状を変える事はできない。
でも、自分のやり方なら変える事は出来る。
私はまず、少しでもコストを抑える為、
梱包作業を手伝ってくれる若い男性を呼ばずに、
自分一人で作業に向き合う事にした。
そして、お客様が今まで支払ってくれた金額に近づけるため、
仕入れ価格が抑えられたワイン、かつ美味しいワインを探す努力をした。
また、12本セットのワインを、10本セットに変え、送料を20kgから15kgに収まるようにした。
そうこう思考錯誤をするうちに、
私の中で意識が変わっていった。
ワインやオリーブオイルを商品としてとらえず、お客様に豊かさを感じてもらえる象徴にしよう!と。
私は時々、家族で妙高の赤倉温泉で過ごした日のことを思い出す。
亡き父がそこにはいる。
私たちの生活レベルからしてみたら、高すぎる温泉だったが、今となっては、その思い出が掛け替えのないものになっている。
カラヤンのコンサートだって、当時の学生の身分にしては高いチケット代だったけど、あの日、サントリーホールで見たカラヤンの姿は忘れられない。
若い頃の海外旅行もそう。
出会った人との感動があり、そのどれもが、ただの「出費」ではなく、心を満たしてくれるものだった。
そう感じ始めた時、「ならば、私が届けるワインやオリーブオイルも、そうあるべきだ。人の心を潤すものでなければならない」と思うようになった。
2年前には酷い決算を出し、先行きに不安を感じたが、昨年は私を支持してくださるお客様のお陰で、少し成績が修復されてきた。
さて、イタリアのワイン業界にとって最大の輸出先はアメリカだ。
そのアメリカが、「高いから」という理由で、もしくは、カリフォルニアのワインがカナダに輸出できず、自国で消費しなければならない、という理由で、イタリアワインを買わなくなったら、イタリアの生産者たちは、どのようなアクションを起こしていくんだろう?
自分の経験から、25%の関税にまつわる消費者や生産者の声に関心がいってしまう。
そして、アメリカのニュースに目がいってしまう2つ目の理由。
私には、ウクライナ人の大切な友達がいて、
彼女は来週、一時帰国への旅に出る。
アメリカからの武器と情報支援が細る今、
彼女の無事が気になってしょうがない。
けれど、彼女がどれほど苦しみ、考え、そしてインスピレーションに導かれて行動する事に、私は口を出す事は出来ない。
政治、気候変動、自然災害などなど…
色々な変化に巻き込まれる昨今、
変えられるのは、自分の思いと行動だけ。
では、どう変わればいいのか?
この答は、「効率的」「コツを掴む方法」「時短」といった、テクニカルを教えてくれる情報の中には見つからず、
もっと奥深いところから学ぶ必要がある、と感じる今日この頃です。
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