トレクワンダ祭りの一日
シエナ近郊の小さな町々では、
春と秋に趣深い祭りが開かれる。
その日は、1930年代に活躍していた蒸気機関車が再び息を吹き返し、黒煙をもくもくと立てながら、トスカーナの美しい丘陵地帯を走り抜け、観光客たちをシエナから小さな町まで運んでくれる。
今日の目的地は、トレクワンダ。
私たちは機関車には乗らず、車で町に到着。
ちょうどお昼時で、
祭りのために設けられた食堂に立ち込めるグリルの煙に、私たちの空腹は更に刺激された。
とりあえず長い列に並んでみたが、
どうやら先に食券を買わなければならないと気づき、友人を列に残して私は急いで食券売り場へ。
ここでは、食券を買ってから列に戻り、
番が来たらそれをスタッフに渡し、
料理を受け取ったら自分でテーブルまで運ぶというスタイルだ。
メニューはとてもシンプル。
ピーチ
(手打ち太麺、ラグーソースまたはトマトニンニク味)
ミックスグリル
ポテトフライ
水
赤ワイン
選択肢は少ないけれと、
待たずに料理にありつけるのはありがたい。
私たちはそれぞれパスタを選び、肉とポテトは
二人前を四人でシェアすることにした。
屋内席では楽団がイタリア民謡を演奏していて
テーブルの客は声を上げて盛り上がっている。
観光客たちは、機関車の発車時間までの間、
教会でのコンサートに耳を傾けたり、
オリーブオイルのテイスティングに参加したり、
地元の人たちと一緒に輪になって踊ったりして過ごす。
地元生産者が並べる品々は
ここでしか手に入らないものばかりで、
私は薫り高いフェンネルの花のスパイスと蜂蜜を購入した。
この祭りは本当にシンプルだ。
ランチは、口頭でメニューを伝え、
係の男性が手書きで食券を発行。
支払いは現金のみという昔ながらのスタイル。
教会から流れる音楽に誘われて人々がす~っと入り、オリーブオイルのテイスティングコーナーも、興味を持った人が自由に自然と参加していく。
オリーブオイルのテイスティング中、
広場での楽団の音楽が少し大きすぎて説明者の声が聞こえにくくなると、オリーブオイルの係員がすぐに外に出て、「もう少しあっちで演奏してくれないかしら?」と声をかけた。
すると、楽団も町の人たちもすんなりと移動して、何事もなかったかのように再び祭りが続いていく。
夕方、17時45分。
祭りを楽しんだ観光客は、
再び汽車に乗ってシエナへと戻っていく。
私たちもその光景を見たくて、駅へ向かった。
ホームで見送る私たちに、たくさんの人が手を振ってくれて、お別れの空気まで味わえた。
まるで大人の学園祭のような雰囲気の中、たくさんの笑顔と穏やかな空気に包まれた秋の一時でした。
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