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2024年6月

2024年6月30日 (日)

【シエナのパリオ 1】

シエナは小さな街ながら、
17の地区(コントラーダ)に分割されている。

各コントラーダには集会所があり、
食事会やイベントが行われる他、
普段の日も、子供からお年寄りまで、
集会所にやってきては、仲間とお喋りをして過ごす。

会社は給料の代価と引き換えに過ごす場所であり、
退社をすると個人の生活に戻っていく。

学校も、学問の学びの場として過ごし、
授業を終えると家に戻っていく。

では、コントラーダに集まる理由とは何だろう?

それは、簡単に言ってしまうと
「自分の居場所を感じるから」だと思う。

仕事や勉強が出来る出来ない、
経済的背景による生活スタイルの違いなど、
持っている能力や資産によって、
ある種のソサエティに自分の居場所と任務を感じる人がいる。

しかし、社会にはそれ以外の人たち、
育児中のママさんや定年退職をした男性、
学校に通わない若者など沢山の人がいて、
彼らも、社会に生きている。

幼児はコントラーダの教会で洗礼を受け、
子供になると何かしらの小さな役割が与えらる。

その役割を通じて、認められる、褒められる、
といった感覚を覚え、翌年、
彼らは年下の子供たちを指導をする事で、
お兄さん、お姉さんとしての自覚も芽生え、
同時に、知識と経験を持つ年長者への敬意を感じるようになる。

人間の体の中で、心臓が一番大事であって、
それに比べると足の親指や前歯は重要ではなく、
無くてもいい、というわけにはいかないように、
コントラーダも一つの体のような機関としてあり、
様々な人がそこにある。

「個」が集まって組織化されるコントラーダ。

そんなコントラーダが一丸となった誇りは一頭の馬に託され、
7月2日、カンポ広場で他のコントラーダと競う事になる。

6月29日の昼過ぎ、カンポ広場にて、
各コントラーダに当てが割れる馬の抽選会が行われました。

強い馬に当ったコントラーダの、
子供からお年寄りまで歓喜の渦にある様子、
そして、各コントラーダでの食事会の準備では、
青年がテーブルのセッティングを担当している写真をアップします!

伝統行事シエナのパリオについて、
私の視点から、自由な感想を述べさせていただきますが、
読み手の皆様とは違った考えも含め、
投稿を通じて〈伝統イベント〉〈地域〉など、
皆様の日常に、いつもとは違った思考や話題が生まれるきっかけとなってくれましたら幸いです。

次回は、7月2日に優勝した地区が優勝旗をもって向かう先、
プロヴェンツァーノ教会について、投稿したく思います(続く)!

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クララと仲間たちの愛らしいコンサート

音楽を通じて出会った仲間たち、
歌を聴きに集った友達や家族、
由緒ある素晴らしい会場を提供してくれたホテルの
オーナーフランチェスコ氏、
そし
て美味しいワインを提供してくれたのは、
1600年からワイン造りの歴史を持つ蔵Selvolini...

この日は、全てがハーモニーで、まるで
ギリシャ神話のミューズに守られているような午後の一時だった。

日本人のソプラノ歌手YUIさんは、4:33から登場。

その他の歌い手は趣味として歌を習うメンバーで、
70歳のテノールのアルテロは、
銀行を定年退職してから歌を習い始めた。

文化や芸術と共に人生を謳歌する大人たち。

この日
★★★★★の人間的な豊かさを味わいました!

 

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2024年6月22日 (土)

シエナの国立美術館 その1

シエナの国立美術館「Pinacoteca Nazionale Siena」で、絵画を鑑賞した。

いつも、描かれた人物の目に視線が行きがちだが
今回はあえて、服に注目してみた。

ふんわりとボリュームある衣服が幾重にも重ねられ
襟元、袖口、裾には細かなデザインが装飾されている。

素材は、極薄なレースというよりも、
凹凸を帯びたマットな高級感があり、
滑らかな生地に上品で力強い光沢がある。

「それにしても・・・
 1400年の服のセンスはなんと優雅なんだろう!」

美術史や宗教、作家、時代背景等、学術的な事を考えず、ただ、美しさと向き合った至福の一時でした。

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2024年6月18日 (火)

今年の蜂蜜、出始めました~♪

「そうだ!今年の蜂蜜、もう出てるかな?」

ふと、蜂蜜が気になって、
生産者が並ぶ青空市場の養蜂家さんを訪れた。

「今年の蜂蜜、ありますか?」

「このMillefiori(百花蜜)が今年のですよ。
 その他は、去年のです」

「アカシアはまだ出ないですか?」

「アカシアは、もうちょっと経ってからかな?」

「去年の今頃は雨が続いて、
 蜂があまり飛べませんでしたけど、
 今年のアカシアはどうですかね?
 沢山、採れそうですか?」

「いや~、去年よりはましだけど、
 量は多くないね。
 2年前は沢山採れたけど・・・」

1個の蜂蜜を買う時、
ついつい色々な質問を養蜂家さんにしてしまう。

ワインやオリーブオイル同様、
本物の蜂蜜も、天候や蜂の病気、
撒かれた農薬の事情によって、
その年のストーリーを持っている。

この日に買ったMillefioriは、
春のお花の詰め合わせ。

今後、夏には夏のお花の詰め合わせが、
秋には秋の花の詰め合わせが楽しめる!

神様が水撒きをした、野に咲く自然の花々。

美しく大地を彩る花を、
蜂たちの働き掛けによって味わう事ができるなんて、
考えてみたら、なんと贅沢な事だろう!
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贅沢たまご!

金曜日は、Lizzaの公園に新鮮な食材が並ぶ日。

車を持たない私でも、
シエナ近郊で農業を営む生産者さんと出会い、
お話を聞く事ができる。

そぞろ歩きをしていたら、
「UOVA FRESCHE DA GALLINE ALLEVATE ALL'APERTO」という文字が目にとまった。

放し飼い鶏の新鮮な卵!

籠の中の色々な色をした卵が可愛いらしくて、
思わず、生産者さんに声をかけた。

「すみません、何羽のニワトリがいるんですか?」

「400羽ですョ」

「わ~♪ 放し飼いなんですか?」

「はい、そうなんです。夜になると宿で寝ますが、
 あとは、放し飼いです!」

「色々な色の卵がありますね。
 ニワトリの種類によって、卵の色が違ってくるんですか?」

「そうなんです。
 このチョコレート色した卵は黒いニワトリ。
 白い卵は白いニワトリ・・・
 このブルーの卵はアローカナ。
 値段はちょっと高めですが、コレステロール値が低いんです」

400羽のニワトリさんたちが、
屋外を小走りしている様子や

彼らが産んだ卵をせっせと収穫する生産者さんの姿
を想像すると、
何だか幸せな気分になる!

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2024年6月17日 (月)

今日も、お疲れ様でした・・・

洗濯物をたたんでいる時、

「何っておこう?」と
買い物リストをボンヤリと考えている時、

「今日も無事に終わった~」と一息つきながら、
今日の出来事を回想している時・・・

音楽でも流そうかな?という気分になる。

さて、何を聞こう?

聴く、というより、
部屋に風を流す、という感じ。

疲れを感じている時に、
元気で張のある曲はちょっと違うし、
メッセージ性のある歌詞とも向き合いたくない。

そんな時、
こんなアルバムはいかがでしょうか?

 

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2024年6月16日 (日)

ミッレミリア 2024

いくつになっても
好奇心とチャレンジ精神を枯らさない、

本気で遊びを楽しむ大人たちがシエナを駆け抜けた!

日本人ドライバーもキャッチ!

皆様にこの日の雰囲気を楽しんでいただきたく、
動画でご紹介です!

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2024年6月14日 (金)

【シエナのパリオ祭シリーズ】子供とドラム

7月2日のパリオ祭が近づいてきた。

この日、シエナにある17地区の一つ、
タルトゥーカ(亀)地区を通ると、
各通りにタルトゥーカの旗が掲げられ、
タルトゥーカの集会所前では、
子供たちがドラムを叩いていた。

各コントラーダには、
集会所、教会、そして博物館がある。

赤ちゃんが生まれると、集会場に水色(男児)、またはピンク(女児)のリボンが飾られ、
また、コントラーダ内で訃報があると、
黒いリボンが飾られる。

赤ちゃんはコントラーダ内で洗礼を受け、
幼少の頃から集会所で過ごし、
物心つく前からコントラーダに自分の居場所を感じ始める。

コントラーダでの初の役目となるドラム。

小さな子供たちは、ドラムの行進を通じて自分の役割と責任を感じ、自分がこのコントラーダの一員である自覚と誇りを感じ始める。

こうして、子供の頃から地区とのコミュニティが生まれ、自分の地区を大切にする意識が育まれていくシエナの街。

パリオ祭とは何か?

これを説明するには まず、
シエナの街が17のコントラーダ(地区)から成り立っている事、
そして、シエナ市民がどのようにコントラーダと関わっているか?を説明する必要がある。

中世から続くシエナのパリオ祭。

「各地区を代表する馬がカンポ広場を走る、
 地区対抗の馬のレース」

と表現するには、あまりにも浅すぎる。

かといって、長い伝統やしきたりを長々と解説しても、私たち日本人、いや、シエナの隣街の人にとっても、理解が難しいと思うので、
これからゆっくり、シエナ人の気持にもスポットを当てながら解説をしていきます。

今回は【子供とドラム】の光景から、
無形のエネルギー漂うシエナの特殊性を感じていただけましたら幸いです!
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シエナのドーモ:ニコーラ・ピサーノの説教壇

「見てごらん、人間の感情が
 ドラマチックに伝わってくるだろう?
 ニコーラ・ピサーノの
 1265~1268年の作品なんだよ。
 さっき見たマドンナ・デル・ヴォートの絵は、
 1267年頃の作品。
 同じ年代にも関わらず、表情が全く違うね。
 ニコーラ・ピサーノの作品はとても現実的で、
 感情に訴えるものがある…
 13世紀で最も重要な彫刻作品の一つなんだ」

シエナのドーモにあるIl pulpito(説教壇)の下で、
マッシモの説明に耳を傾けながら、
説教壇に生きる人物の表情を追った。

「これは最後の審判だよ。
 良い行いをした人は天国に、そして
 悪い行いをした人は地獄に振り分けられている。
 ほら、天国組は皆が整列しているのに、
 地獄組は秩序がない。
 手を合わせて懇願している男もいれば、
 “私がですか?何かの間違いです”
 と訴えている男もいる。
 右下には悪魔が待ち受けているよ」

この説教壇には、
「訪問と誕生」「東方三博士の礼拝」「幼児虐殺」「キリストの磔刑」「最後の審判-天国」「最後の審判-地獄」の他、様々な聖書の物語が描かれている。

もし、マッシモの説明がなかったら、
人物の表情やタッチにこれほど集中して鑑賞せず、
「見た事があるけど・・・」
という曖昧な記憶が残るだけだっただろう。

この作品の前に見たマドンナ・デル・ヴォートの絵、そして、説教壇の左隣りにある彫刻と比べてみると、いかに、ニコーラ・ピサーノの作品が生々しくドラマチックに描写されているのか、素人の私でもよく分かった。

クラシック音楽同様、
作曲家やその時代背景、
音楽のスタイルを知る事なく、
ただ、美しい音色や音楽表現に触れ、
豊かさを感じられるように、
彫刻や絵画も、自由に柔らかく楽しんでいきたい!

シエナのドーモには、
美しく偉大な作品が沢山あります。

少しずつではありますが、
こうして素人レベルなりとも ご紹介していきます!

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Giudizio Universale 
最後の審判で選ばれた者たち、そして、断罪された者たち

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Giudizio Universale 最後の審判-選ばれた者たち

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Giudizio Universale 最後の審判-断罪された者たち

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Crocifissione キリストの磔刑

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Adorazione dei Magi マギの礼拝 東方三博士の礼拝

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Visitazione e Natività 訪問と誕生

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マドンナ・デル・ヴォート

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別の作家による彫刻

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2024年6月11日 (火)

オリーブの実、現れました!

春から初夏へ ゆっくり気温が上昇中。

神様がジョウロで水撒きをしているかのように、
毎日、少しの時間だけ、優しい雨が降る。

陽と雨水を受けて、
オリーブの赤ちゃんが健やかに成長してます!

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2024年6月 9日 (日)

ファンチュッリ農園からボンジョールノ!

5月31日、ファンチュッリ農園のエンリコを訪ねた時の動画をユーチューブにアップしました。

動画を通じて、皆様が私たちと一緒に散策している気分になってくれましたら嬉しいです!

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バロック音楽とシエナ

シエナの中心、カンポ広場に続くMontanini通り。

バール、靴屋、洋服屋、本屋など店が並ぶ中、
住居や事務所に使用されている建物があり、

それらの門は閉められている。

118番地のSergardi邸もその一つ。

しかし、今日、
音楽を聴きに集う人に、この門が開かれた。

邸宅の中には小さな劇場があり、そこで
クララが企画したバロックのコンサートが行われる。

この日の演目は、1700年前後に活躍した
ヘンデルやヴィヴァルディ、グルック、ペルゴレージ等

開演前、邸宅主のフィアンマさんが邸宅の歴史を語り、続いてクララが、バロック音楽について、短いながらもとても興味深い話を聴衆に語ってくれた。

この邸宅のすぐ近くに
「Palazzo Bernardi Avanzati(ベルナルディ アヴァンザーティ邸)」がある。

1686年、この邸宅で、あのヘンデルにも多大な影響を与えた偉大なカストラート歌手、セネジーノことフランチェスコ ベルナルディが生まれた。

シエナで生まれた彼は、
ローマやヴェネツィアで活躍した後、
ドレスデンのザクセン選帝侯で歌い、
その後、ヘンデルに呼ばれてロンドンに渡り、
ヘンデルのオペラを演じ続けた。

ヘンデルをはじめ、沢山の作曲家がセネジーノの為に生み出した楽曲の中には、
「えっ、この曲もだったの?」と、
私がいつも聴いている曲も沢山あったりする。


コンサートの後は、
ジャスミンが香る庭でアペリティーヴォ。

庭からの眺めは、
表通りの固い石のイメージとは全く事なり、
高い空の下にレンガの屋根が広がり、
緑も見え、長閑さが漂っている。

音楽を通じて1700年代の息吹に酔いしれた私たちは、
今度はワイングラスを片手に、
知らない人との交流を楽しみ、心地よい酔いに浸った。

温故知新。

古きものを通じて、
今が新鮮に感じられる今日この頃です!
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2024年6月 6日 (木)

イタリアで一番大きなアレッツォの骨董行

第一土日、トスカーナ州アレッツォ行われる骨董市の様子を
ビデオでご紹介です!

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2024年6月 4日 (火)

健康年齢の秘訣

犬と遊んだ後、アルド農園に立ち寄って
レタスをいただいた。

「2つ持ってくかい?」

「1個いただきます。
 食べ終わってから2個目をもらったほうが新鮮だから!」

「そうとも!
 コープで買うレタスに、
 ナメクジなんて見当たらないからな!」

レタスの周りには、トマトの茎が着々と成長している。

「おじさん、沢山のトマトを植えたんですね~!」

「そうさ。食べる人が沢山いるから。
 俺と女房だろ?子供夫婦、孫たち、それにキヨミ・・・
 この夏、皆にトマトを配らなくちゃならないんだ」

私は部屋に戻ってきたけど、
アルドおじさんは、今、草刈り機で草を刈っている。

87歳のアルドおじさんを見ていると、
健康年齢の秘訣は、まさに、
こんな日常にあるような気がする今日この頃です。
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枯れない遊び心とイタリア人

私はバブル世代を生きた昭和44年生まれ。

遊びを十分に経験してきた思っていたけど、
イタリアの元ヒッピー族に比べたら、
彼らのそれには、足元にも及ばなかった~!!!

アレッツォで見かけた、
遊び心がまだまだ潤う大人たち!
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シエナ色の土地にオリーブを植えています

絵具に「バーント・シエナ」という色がありますが、この赤茶色をした名の由来は、シエナにある土の色からきています。

シエナという名前がついていますが、
シエナ県全体でみられるわけではなく、
限られた地域で見られる土壌。

オリーブオイルの作り手「ファンチュッリ農園」で
シエナ色の土地に1000本のオリーブを新たに植えたく作業をしていると、1300年代の陶器の欠片が出てきました!

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2024年6月 1日 (土)

オリーブの花が満開です

オリーブオイルの作り手、
ファンチュッリ農園のエンリコとオリーブ農園を回った。

「見てごらんよ! 沢山の花!
 このよそ風はパーフェクト。
 気温もパーフェクト。
 暑すぎくもなく、寒すぎくもない。
 今のところ、いい運びだ!」

昨年は、開花時期に雨が続いたため、
花粉が舞い飛ぶことが出来ず、
受粉がうまく行かなかった。

いつだったか?
冷涼な春が続き、
遅れて開花時期を迎えたが、
同時に30度を超える夏日が始まってしまい、
せっかく咲いた花が焦げてしまった年もあった。

気候変動で受粉が安定しない年が続く中、
今年の受粉は絶好調!

オリーブの花は満開で、
そよ風に乗って花粉が飛び交い、
受粉から小さなオリーブの実が沢山生まれています!

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シエナと高齢化社会

2週間の日本滞在からシエナに戻ると、
大家のアンナおばさんも、
ボランティアの同僚ブルーナも、
脚を怪我して、外出が難しい状況に陥っていた。

2人とも、80歳という高齢でありながら
常に動き回っている自立した女性で、
彼女たちと向き合う私は、
どこか、彼女たちの言う事に黙って耳を傾ける、
という立ち回りだった。

そんな彼女たちが、歩行が困難な為、
部屋にこもった生活を強いられ、
老化の現実を突き付けられ、
ちょっぴり違った表情を見せる。

ある日、ブルーナの家を訪ねると、
彼女は、珈琲カップを片手に呟いた。

「私は、自分の事は自分でやる、
 という主義なの。

 そうやって生きてきた私が
 誰かに助けを求めるのには、
 相当な勇気がいるのよ・・・」

何だか分かる。

いつも、人の世話をする人は、
自分の事で人を使う事をためらってしまい、
心の底では助けを必要としていても、
つい「大丈夫」と口走ってしまう。

口で助けを発したとしたら、それは、
〈頑張ってみたけれど、どうにも出来ない〉
というレベルに至った、という事。

自立の気性と誇りに妥協が絡み合った彼女を前に、
切ない気持ちになった。

ブルーナはその後、足の腫れも引いて、
少しずつ歩けるようになった。

しかし、大家のアンナおばさんは、
事故で痛めた膝の完治まで、まだ時間がかかる。

医者から、歩き回る事を禁止されているので、
私は、毎日、料理を運んでいる。

「No~、キヨミ! そんなに気を使わないで頂戴!」

と慌てた口調のおばさんを前に、
ブルーナの言葉が頭をよぎった。

「アンナおばさん、自立した人ほど
 人のお世話になる事に抵抗を感じますよね。
 でも、頼るべき時は、勇気だして頼ってください」

するとおばさんの表情はふわ~っと和らいで、
両腕で私を呼び寄せ、力強く抱きしめた。

最近は、私の料理を楽しみに待っていてくれて、
「今日は何?!」と笑顔で迎えてくれる。

私は、自分の食事に関して、
手抜きメニューで済ませる事が多いが、
人の為となると、
自分のプライドにもスイッチが入り、

メニューの考案~買物~調理と、力が入る。

人の役に立っている、
という自負心に浸かりつつも、

「結構大変だわ~」と苦労も感じ始めている。

毎日、家族の為に料理を作るママさんは凄いな~!

彼女たちが住むアパートの階段を上りながら、
高齢者が中世から存在する古いアパートに住むということはどのような事なのか?

考えさせられる。

ユネスコに指定された中世の街では、
建築物をいじる事が難しく、
バリアフリーやエレベータの設置も難しい。

ひまわりの成長と共に、
祭り気分の夏が開幕していくというのに、

オリーブも葡萄も、
陽と雨を吸収しながら実を膨らませていくというのに、

ツバメたちはびゅんびゅんと飛び回っているというのに・・・

年輪の下に見え隠れする繊細さを感じる今日この頃です

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