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2024年5月11日 (土)

庶民の視点からみた歴史的建造物


日本に帰省すると、隣町に住むYさんと会う。


Yさんは昔、ミラノに住んでいた経験があり、
日本に戻ってから美術の先生を務め、
定年退職をしてからイタリア好きが集まれるクラブを作った。


10年経た今、そのコミュニティは高齢者を中心とした方々の心の拠り所にもなっている。


そんなYさんは、この5月、イタリア旅行を企てている。


「キヨミさん、今回の旅行はこんな感じなんですょ」


そういって、スケジュールを見せてくれた。


「でね、この本なんだけど‥‥」と言って、
カバーのかかった本をカバンから取り出した。


今回の旅行に紐づいた本のはずが、
開いた途端、違っている事に気づいた。


「あら、いやだっ!
 どうして、この本を持ってきちゃったのかしら!
 せっかくだから、キヨミさんにお貸しするわ」


そういって私の目の前に現れたのが、
「教会の怪物たち ~ロマネスクの図像学」


読みだしてみると、とても面白い!


このような趣旨が書かれている。


紀元1000年を超える頃から現れたロマネスク教会。


地方に建てられた教会は、
農村の共同社会の中心となり、
洗礼や埋葬の儀式が行われていた。


聖堂はキリストや聖母マリア、聖人たちだけでなく、怪物や動植物の図像にも満ちている。


当時の主な観者は農民たちであり、
実際に図像を制作したのは、その地方の石工。

そこに巡礼者たちも立ち寄ったであろう。


一般的に中世では、
文字文化を支配しているのは聖職者で、
地方封建領主も、農民同様、
読み書きは出来なかったようだ。


・教養があり、宗教権力を握る聖職者
・世俗的に権力を握る領主
・読み書きが出来ない世俗性を持つ民衆


これからの人々が集まる教会の彫刻、
モザイク、フレスコ画には、
異形の姿をした怪物や植物も見られ、
それはプリミティブな生命感溢れるものであったり、神話や宗教からくる教えであったり、時に皮肉を示唆したものであったり、いろいろなメッセージが込められている。


なるほど!


世界史、イタリアの歴史を勉強してこなかった私は、世界遺産だらけのイタリアにいながら、教会や絵画について、どこか距離を感じていた。


しかし、読み書きのできなかった民衆の視点に立つ事は出来る。


これは、日本のお寺や神社にも言える事。


龍や獅子をはじめ、
さまざまな梁や柱に刻まれた寺社彫刻は、読み書きのできなかった百姓に、どのような教えを伝えたのだろう?


この本を私の手元に置いておきたく、
早速ネットで注文をした。


シエナに戻ったら、この本を手に、
地方のロマネスク式の教会を訪れてみたく思います!
(柏の葉のYさん、Grazie!)

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