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2024年5月13日 (月)

【庄屋忘備録 その2】

「お客様、お帰りで~す。
 あ~りがとうございま~す!」の威勢のよい声、
時々ドット沸き立つテーブル客の笑い声も聞こえるけど、私はスマフォのユーチューブで、美空ひばりの歌声を聴いていた。

これまで、美空ひばりの歌をきちんと聴いた事がなかったけど、居酒屋の雰囲気と、母が好きな歌手という理由で、なんとなく選んでみた。

一人飲む私に、歌は直球で入り込んでくる。

《でこぼこ道や曲がりくねった道
 地図さえないそれもまた人生》

《ああ、川の流れのように
 穏やかに この身をまかせていたい・・・》

聴いているうちに、涙が出てきた。

泣いている事を隣客に気付かれないように、
カウンターに肘をつき、こめかみに指を当てて顔を隠しながら聴き続けた。

「その通りだ。
 地図さえない、それもまた人生なんだ」

今を充実して生きたいのに、
将来の問題を考えると、暗い気持ちになる。

それはまるで、今日が晴天であっても、
未来の雨雲を糸でわざわざ引っ張ってくるような、
そんな感じ。

未来の問題に備えたくとも、
いつ、どのようにそれが起こるのか?わからない。

すると今度は、
分からない事に対する不安の雲が生まれたりする。

「分からなくていいんだ。
 地図さえない、それもまた人生・・・
 川の流れのように
 穏やかに この身をまかせていたい・・・」

もう少し、心の膿を流し出したくて、
2次会を続ける事にした。

庄屋の前には、深夜まで営業しているスーパーがある。

そこに駆け込み、日本酒とつまみを買って、
足早に家に向かった。

「お母さん、ただいま~」

足音を立て、リビングに荒々しくつくなり、
テレビの画面で、美空ひばりのユーチューブを流し始めた。

それまで寝ていた母も、パッと起き、
一緒になって美空ひばりを聴いた。

母は、ちょこっと注がれた日本酒を、
「美味しいね~」と言って、大事そうに味わった。

人は哀しいものですね~

人生って 不思議なものですね~

人は かよわいものですね~

人生って、嬉しいものですね~

人は かわいいものですね~

今度は泣かなかった。

美空ひばりの歌と酒に飲まれた一日でした・・・

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