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2024年4月19日 (金)

カンポ広場にある郷土料理

カンポ広場から数メートルという距離にありながらも、
観光客に見過ごされている、昔ながらの食堂がある。

一見、倉庫のような外観をした扉を押し、
店内に入ると、ヴィットリオ・ガスマン似のカメリエーレが
手に皿を持ち運びながらも、
「いらっしゃい!」と顔で挨拶してくれる。

「奥のテーブル席へどうぞ」

前回も、このテーブル席を勧められた。

この席に着くと、店の様子が見渡せて面白い。

アルバイトの外国人男性がやってきて、
水はいるかどうか?聞いてきた。

「水は結構です。赤ワインください」

そう答えると、フィアスコに入れられた赤ワインがすぐテーブルに運ばれ、私たちは、この飲み口のよいワインを飲みながら、カメリエーレを待った。

ガスマン似のカメリエーレは、料理を運ぶ際
テーブルで軽い会話を交わしている。

これも、典型的な昔のカメリエーレのスタイルで、
そんな彼の会話に、他のテーブル客が聞き耳をたて、時には、会話に参加してきたりする。

外国人アルバイトは手が空いているが、
注文を取るのは、ガスマンの役目と決まっているので、私たちは、彼が来るのを待った。

私たちのテーブルにやって来た時、
順番が回って来て嬉しくなった。

ガスマンは早速、メニューを語り始めた。

「ピーチ、タリアテッレ、リコッタ入りのラビオリ、ニョッキ・・・・」

ん? いいね? というように、
私の表情を確認すると、今度はソースを語り始めた。

「ラグー、鹿のラグー、オッソブーコのソース、トマト・・・さあ、どうしますか?」

昔ながらの食堂では、
こうして、先にパスタの種類を読みあげ、
次に、ソースを伝え、
客は、好みのパスタとソースの組み合わせを伝えることになっている。

「なるほど。分かりました。
 セコンド(メイン料理)は何があるんですか?」

すると、ガスマンは、肉料理を朗読しはじめた。

「ピッチョーネ(鳩)、ファラオーネ(ホロホロチョウ)、トリッパ、オッソブーコ、豚のオーブン焼き・・・」

忘れてしまったけど、
この他にジビエ系の肉も読み上げていた。

この店は昔から地元客を相手に郷土料理を手掛け、
中でも、ジビエを得意としている。

以前、ピッチョーネを頼んだ時、
白いお皿に、気絶したかのような鳩が運ばれてきたので、
私は、ジビエ系を避け、オッソブーコを選んだ。

その前に、プリモのパスタを1品ずつ、
私はピーチを、そして友達は、タリアテッレを注文した。

この手の店はボリュームを盛ってくれるので、
シェアした肉料理も、たいあげる事が出来なかった。

すっかり満足し、会計を済ませて店を出ようとしたら、
雨が降っていた。

「雨がおさまるまで、店で待ってるといい」
と言われ、
私たちは再び席についた。

これからスタッフはまかないを食べるというのに、
ガスマンは、私たちの事を気遣い、
水とグラスを持ってきてくれて、
リッチャレッリのお菓子もサービスでくれた。

トスカーナのレストラン事情も少しずつ変わり、
中には、QRコードでメニューをダウンロードしなければならない店もある。

時代の流れに、レストランの在り方もゆっくりと染められていく中、このような、昔ながらの食堂で郷土料理を食べるひと時に、ホッとできる今日この頃です。

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