« 今日からのロゼワイン | トップページ | Strade Bianche 2024 »

2024年3月 2日 (土)

【ジョヴァンニ・アレヴィ】Sanremo音楽祭2024

イタリアで最も権威ある歌謡祭
「Sanremo音楽祭2024」が2月6-10日に行われました。

コンピュータ化が定着し、
テレビ離れの傾向があるにも関わらず、
イタリア国民から高い支持を得続けている理由、
それは、このステージで、音楽だけではなく、
時事のメッセージを含めた発信があり、
問題提起や共感といった話題に溢れているからです。

今回、皆様に紹介したいのは、
2月7日に登場した音楽家のジョヴァンニ・アレヴィ。

多発性骨髄腫の為、治療に励んでいた彼が、
2年ぶりに、公に姿を現し、
皆の琴線に触れる演奏を披露してくれました。

そのシーンのビデオを添付します。

映像で語られている司会者アマデウスと、
アレヴィの翻訳をしてみました。

♪♪♪

〈司会者:アマデウス〉

サンレモは価値ある大切なステージです。
まさに感情を解き放つステージ。

多くの人にとって、サンレモのステージは到達点であり、
同時に、多くの人にとっては新たな出発点でもありました。

今夜、このステージは新たな再出発点となります。

私たちは、人生が予測不可能であることをよく知っています。

喜びも予測不可能であり、
残念ながら苦しみも予測不可能です。

光と闇のバランスを常に探り続けています。

今夜、私たちは光の側に居たいと思います。

彼は才能ある作曲家であり、
国際的に有名なイタリアのピアニスト。
同時に作家であり、哲学者であり、
驚かせる技を知る人物でもあります。
ニューヨークから北京、東京、ロンドン、パリ、マドリッド、そしてもちろん母国イタリアまで、世界中の重要な劇場でその才能を披露し、何百万人ものファンを魅了してきました。

これは光の部分です。

そして、闇。

突然の大病により、
彼は舞台から離れざるを得なくなりました。
治療のために音楽活動を中断せざるを得ませんでした。

長い期間です。

まだ、向き合うべき坂はあります。

しかし、彼は聴衆の前で演奏するため、
サンレモに戻りました。

マエストロ、ジョヴァンニ・アレヴィを迎えるこの瞬間の喜びは計り知れません!

♪♪♪

〈ジョヴァンニ・アレヴィ〉

突然、私にとって全てが崩壊しました。

私はもう2年近くも人前でピアノを弾いていません。

ウィーンでの最後のコンサートでは、背中の痛みがひどく、
最後の拍手の間、椅子から立ち上がることができませんでした。

その時、私はまだ自分が病気であることを知りませんでした。

後に、非常に難しい診断が下されました。

私は1年間、まるで39度の熱に魘されてた気分で天井を眺めていました。

多くのものを失いました。
仕事も、髪も、そして確信も。

でも、希望は失いませんでした。
想像する意欲。
まるで痛みが、私に予期せぬ贈り物を与えてくれたかのようでした。

例を挙げてみましょう。

病気が起こる前、満席の劇場でコンサートをしていた時、
空席があることに気づきました。

「空席があるなんて!?」

寂しかったです。
でも、駆け出しの頃の長い期間、
15~20人の聴衆の前でコンサートをして、とても幸せでした。

今、病床の後、何を演奏すればいいのでしょう?
15人の前で(笑)。

数字は関係ないのです。
これは逆説的であるように思えますが・・・
なぜなら、私たち一人ひとり、皆さんそれぞれが、
それぞれのやり方で唯一無二だからです。

他の贈り物。
それは創造物の美しさへの感謝。

病室から眺めた夜明けの赤と夕焼けの赤は違うんです。
雲があるとさらに美しいです。

もう一つの贈り物。
それは、医師、看護師、病院スタッフ全員の才能に対する感謝の気持ちです。
科学研究に対する評価。
それがなければ、私はここで皆さんにお話しすることはできなかったでしょう。

家族からのサポートに感謝。
強さ、愛情に感謝します。
それは、他の患者さんから頂いたものだったりするんです。

戦士たち。そう呼びたい。
私も、他の患者も、そして彼らの家族も。
病気に戦う小さな戦士たちの両親に約束したように、
今、私はこのステージに、皆を連れてきました。
真の人生の素晴らしい模範です。

最後の贈り物を語る前に、彼らに拍手を送りましょう。

まだ贈り物はあります。
いったい、いくつ、あるのでしょうね(笑)!

すべてが崩壊し、本質的なものだけが残されるとき、
外部から受ける評価はもはや重要ではありません。

私は私であり、私たちは私たちです。


哲学者のイマヌエル・カントが著書「純粋理性批判」の最後で示しているように。

星空は完璧な軌道を描いて回り続けます。
絶え間ない変化の中に身を置いていても、
私の中には何かが残ると感じます。
世の中のものは常に変化し続け、同じ状態にとどまらない。

私は私なんです。

この考えの真相に迫りたい。

そうだとしたら、外からどんなジャッジが下ろうとも、
私は新しいジョンを受け入れたい!

では、行きましょうか?!

♪♪〈司会者:アマデウス〉
あなたも今、私たちに贈り物をしてくれていますね。

♪♪〈ジョヴァンニ・アレヴィ〉
どうやら15人以上いるようですね。
でも、ご注意を!
私には学術記号でいう L10 と L1が発生しています。
指が震え、うずくような感じの神経障害があるんです。
その私がピアノを弾かなければならないのですよ(笑)


ウィーンでの最後のコンサートで体験した通り、
もう体に頼る事はできませんので、
全身全霊で弾きます!

♪♪〈司会者:アマデウス〉
これが音楽の力です。
これが、人生の強さです。
私にとって、サンレモで美しい1ページです!

|

« 今日からのロゼワイン | トップページ | Strade Bianche 2024 »