高貴なバラを飾ってます
金曜の夜、
学生でにぎわうバールに、バラ売りの男が入ってきた。
テーブルに近寄る彼に向って、私は「ノー」のジェスチャーをした。
男性がテーブルを去ろうとした時、
バラ売りの男に背中を向けて座っていた臨君が
「やぁ!」と彼に手をかけ、さっと席を立って握手をした。
「元気かい?」みたいな挨拶を交わした後、
バラ売りの男は、他のテーブルを回り始めた。
「友達?」
「はい。彼、バングラディシュ人なんですけどね、
偉いんですよ。
早朝、カンポ広場にレストランのテーブルを並べるんです。
それを終えると皿洗いをして、夜はバラを売っている。
すっごく誠実でいい人なんですよ」
臨君の言葉を聞き、私は偉く感心した。
「私、もうすぐ誕生日だし、部屋にバラを飾りたいわ。
彼から買う!」
その後、私たちが話しに夢中になっている間に、
バラ売りの男はさ~っと店を出て行ってしまった。
「あー、行っちゃったよ~!」
すると臨君は素早く席を立ち、彼を呼び戻してくれた。
「もうすぐ誕生日なんです。バラをください」と伝えると、
「白ですか?赤ですか?」と尋ねてきた。
私は50歳から心機一転したく、
全てを白いバラにしようと思ったけど、
女性としての貫禄もまといたく、赤いバラもリクエストした。
彼は7本のバラを選び、
バランスよくまとまるよう、時間をかけて束ねてくれた。
この時、0時を優に過ぎていた。
早朝から働き続ける彼は、くたくたに疲れているはずなのに、
とても丁寧に、気持ちを込めてバラを繕ってくれて、
「お誕生日、おめでとうございます」と私の目をしっかりと見てお辞儀してくれた。
凄く高貴なバラに思えた。
いつかは枯れるけど、
このバラは一生、心に咲き続け、
メッセージを語ってくれます。
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