ふう君食堂
正月早々、ふう君の家を訪れ、彼の手料理を嗜んだ。
食べる事が大好きなふう君は、
シエナでの留学生活を機に自炊をはじめ、
作る喜びに目覚め、
毎日のように手の込んだ料理を作っている。
一人暮らしの場合、簡単に食事を済ます人が多いけど、
ふう君は煮込み料理にはまっているようだ。
彼はまだ若いけど、小さな頃から一流の食事を口にし、
また、化学調味料を避けた食事をしてきているので、
素材を活かしたバランスのとれた料理のあるべき姿が分かっている。
「サラダでも作りますね」
と言ってチャチャっと手掛けた鶏肉とキュウリのサラダは、
ごま油が隠し味として仄かに使われているし、
蒸したエビは、エビの甘味がメインになるよう、
出汁の味が控えめに使われていた。
ふう君は料理以外に、文化や伝統、人類学、宗教等々、
幅広い領域に興味があり、
それらの知識が料理上で交差する事もよくある。
この前、ふう君と切売りピザの店に入った時、
「ファリナータ ディ チェーチ」を注文した。
「これ何ですか? 初めて食べます。
凄く美味しいですね!」
感激するふう君を見て、お店の人は気をよくし、
「ひよこ豆の粉と水を合わせて3時間置き、
塩とオリーブオイルを足して焼くだけさ」
と教えてくれた。
私たちはピザを頬張りながら、
アイフォンで、ファリナータ ディ チェーチの動画を見て、
楽しく知識を得た。
数日後、ふう君から、彼が手掛けた
ファリナータ ディ チェーチの写真が送られてきた。
シエナで生活するようになってから、
料理人を目指す留学生を何人も見てきた。
厨房で働きながらソムリエの資格を取ったRさん、
研修先のレストランで働きながら、夕方の空き時間には近くの肉屋に行き、ソーセージの作り方などを取得しようと頑張っていたKさん、
時間が出来ると遠方に出向き、その土地の人しか知らないような郷土料理に触れたケンチャン・・・
私も厨房で料理をしていた時期があるけど、
本音は「美味しいね!」と言ってもらえる事が嬉しくて、
もっと褒めてもらいたいから頑張っていたようなところがある。
でも、イタリア料理を目指す料理人や、ふう君のように、
好奇心の向くまま どんどん料理に向かう人は、
私の知らない食の世界へと向かっていく。
ふう君が手掛けてくれた
「幅広い知識」「経験」「パッション」が含まれた料理に触れ
私も、その3要素のスパイスを真似してみたくなった今日この頃です!
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