仕事のピークを越え、贅沢にも20時にベットに横たわっていると、窓ガラスを叩く音がした。
「大家のアンナおばさんかな? 今頃、何の用かしら?」
窓を開けると、外には
近所に住むロベルトが恥じらったような笑顔で立っていた。
「ごめんキヨミ。一つお願いがあるんだ」
「何?」
「湿布を貼って欲しいんだよ」
ロベルトは昨年 離婚し、
今年は子供も同棲を始めた為に家を出たため、
今では一人暮らしになってしまった。
離婚して間もなく彼女をみつけ、上手くやっているが、
彼女にも生活があるので、夜は一人でいる事が多い。
「腰を痛めたから、病院で湿布をもらったんだ。
昼は彼女に貼ってもらったんだけど、
今、貼り替えなくちゃならないんだよ」
そういって、腰をさすった。
「お安い御用よ!」
私は窓にまたがって身を乗り出した。
「ほら~、キヨミはそういう恰好ができるだろ?
俺は出来ない」
そういって私に背を向け、セーターをまくりあげ、
ズボンを軽く下した。
お尻が半分むき出しになっているけど、
動揺しない振りをした
「まずは、この大きな湿布を剥がさなくちゃね」
そういって、短い爪で湿布の端っこをひっかき、
そっと剥がし始めた。
ピチピチ・・・と音を立てながら、
湿布は毛を毟りながら肌から離れ、
ロベルトは、「オーッ!」と声を上げた。
「ごめ~ん! 一気に剥がしたほうがいいわね。
行くわよ!」
そういって私は覚悟を決め、ビリーっと湿布を剥がした。
同時にロベルトは「オ―ッ!」と悲鳴をあげ、
エビのように仰け反った。
私も力んだけど、
同時に、少し面白がっている小悪魔的な顔も垣間見た。
「一体どうしちゃったの?」
「年だよ」
「早く楽になるといいわね。
もし、湿布が効かなかったら、
日本から持ってきた特効クリームがあるから、
それを塗ってあげる!」
「そんなのあるの?」
「そうよ。
本来は馬が足を骨折した時に付ける薬だったらしいの。
でも、人間にも効くのよ」
「是非、お願いしたいところだ」
翌日19時を超え、
私はロベルトが窓を叩くのを待っている。
昭和のドラマに出てくるような近所づきあいを味わっている今日この頃です・・・