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2018年9月26日 (水)

【女一人飲み その2】


中学時代の親友と松戸で飲み、
地元の駅に着いたのは深夜だったけど、
またいつもの居酒屋に寄ってしまった。

扉を開けると、お気に入りのカウンター席には男性客がいたので、2つ隣の席に着いた。

この日は土曜日で、
店長の娘、Yちゃんがホールで働いていた。

おしぼりやお酒を運んでくれる度に、
ちょっとした会話が出来る距離感が嬉しい。

「今、何に興味があるの?」

「お茶の倶楽部に入ってます。すっごく面白いです!」

「へぇ~、意外だな。素晴らしいね~
ところで、こんなに遅くまで働いてて疲れるでしょ。
明日は日曜日だから、ゆっくりと寝てられるね~」

「それが、明日もバイトを入れちゃったんですよ。
 吉野家の牛丼でもバイトしてるんです」

「あら、そんなに働いて、お金が貯まるわね。
 貯めたお金で旅行するとしたら、何処に行きたい?」

「そうですね~、京都かな? 
 修学旅行で行ったけど、旅行で行ってみたいです」

今ごろの大学生が、茶道に興味を持ち、
京都に行きたい、という感覚を持っている事に驚いた。

Yちゃんの立ち位置は、私と先客のカウンター席の男性の間だったので、Yちゃんを介し、私と男性は話をしはじめた。

50代半ばのヒョロっとした男性は、
緑色した酎ハイを何度もお代わりしている。

「この前のアメリカ出張は長くて、食事が辛かった」

と言うセリフからして、仕事はしっかりとしてそうだけど、
外見だけみると、凄くイケてない。

「僕、吉祥寺でライブを見てきた帰りなんです。
 ものすごく腕のいいサックス奏者がいるんです。
 彼は天才ですよ。
 この前なんて、北海道までライブを観に行きました。
 でも、ほとんどは、僕の貸切状態なんですがね・・・」

背中を丸め、緑色した酎ハイを飲み続ける男性に
何だか親近感を覚えてきた。

「お姉さんも、他で飲んできたって言ってましたね。
 さっきの会話、聞こえてました」

「そうなんですよ。でもね、この店が好きだから、
 ついつい、寄っちゃうの」

「そう。この店、いいですよね。
 ぐるなびとかあるけど、
 ネットで検索しても、店の雰囲気までは分からない。
 結局、雰囲気なんですよ。店は。
 僕はね、もう、ネットでは店を探しませんよ。
 勘が良くなってきて、店選びも間違えなくなってきた」

「この店、心でもてなしてもらえるから、
 嬉くて通っちゃいますよね。ソウルだわ!」

すると男性の声が、だんだんと弾んできた。

「わ~、今日は凄いぞ!
 そう! 結局、心なんですよ。
 この店ね、昨日はカウンターに、ヒマワリがあった。
 今日は別の花。
 ヒロミさんが毎日、花を変えてくれてるんです。
 さっきのライブハウスのトイレにも、花があったんです。
 僕、そういう所に感動しちゃうんだよな~
 今日は、凄い!」

丁度その時、女将のひろみさんが刺身を運んで来てくれた。

私は彼女の耳元で

「あの男性ね、ひろみさんの心に感動しているんだって。
 昨日はヒマワリで、今日はこの花・・・」

私たちはクスクスっと笑った。

暫くすると、店内に蛍の光が流れ始めた。

もう2時を回っていた。

今日も、酔い日でした!

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