夏の夜を楽しんでます
夕方、ふと外出したくなってパトリッツィオと街に出た。
食事を終え、野外映画でも観ようと思っていたけど、
この日はサスペンス。
私たちは、子供向けのアニメを見る事があっても、
血は得意でないので、諦めた。
「これから何処に行こう?
そうだ! キジャーナ音楽院で何かをやってるかも!」
アイフォンで調べたら、丁度、21:15分から
生徒たちによるギターのコンサートがあったので、
早速 会場に向かい、当日券を買って席についた。
ホールは美しく、チケットも5ユーロ。
プログラムには、知らぬ作曲家の名前が沢山あり、
奏者の中には日本人男性の名前もあったので、
気分はウキウキだったけど、一つだけ、心配があった。
「ねえ、寝ないでね。イビキが響いちゃうから」
「俺がいつイビキかいた?」
「ずっと前だけど、ピアノのコンサートに行った時、
船漕ぎながら寝てたじゃない。
よりによって、ベートーベンの月光のソナタの1楽章、
すっごく静かな曲の時にイビキかきはじめたから、
私、焦ったわよ。
下手につついて、突然に飛び上がられても困るし・・・」
「覚えてないぞ!」
「寝てたから、覚えてないのよ・・・」
コンサートが始まり、
第一奏者がバッハを甘美に奏で始めた。
(素敵だわ~♪)という思いと
(絶対、寝ちゃうヤツだ)という思いが同時によぎった。
しかも、パトリッツィオの前には、
私のホームドクター夫妻が座っている。
二人目、三人目が演奏を終え、パトリッツィオの顔をチラッと覗くと、彼は起きていた。
視線を落とすと、彼は左手で、右の腕をつねっていた。
演奏会も後半にさしかかり、残すは3名。
ハバナ人作曲家による「戦士の竪琴」が
イタリア人女性によって演奏され、
お次は、心待ちしていた日本人奏者だ。
彼が壇上に現れた。
私は思わず「oh Dio! (オー マイ ガット)」と口にしてしまった。
颯爽と現れた彼は、まるで明治時代のバンカラのようで、
最近の若い男性に見られる女性的なイメージが全くない。
洒落た粗野な風貌をした彼が奏でる、
メキシコ人作曲家ポンセの「主題、変奏と終曲」は、
実に美しく、繊細と表現の奥深さを感じさせてくれた。
トリのイタリア人の演奏も素晴らしかった。
パトリッツィオは腕をつねる事なく、演奏に見入っていた。
翌朝、パトリッツィオと電話をした。
「ボンジョ~ルノ、パトリッツィオ。よく眠れた?」
「ああ。昨日のコンサートで眠らなかったからな。
ため込んだ分、熟睡したぞ!」
この夏も、小さな思い出を少しずつ貯めていきます・・・♪
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