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2018年3月27日 (火)

人間臭いイタリア人

キャンティ地区の長閑な田舎道を走行していたら、
ポツリと信号が現れた。

私たちの前には巡回中のパトカーが走っていたけど、
赤信号を無視して先を行くパトカーの姿は、
次第に小さくなっていった。

「おいおい、パトカーが信号無視かよ」

パトリッツィオは舌を鳴らし、私は笑い声をあげた。

続けてパトリッツィオはテレビで観た一場面を語ってくれた。

「アパートで暮らす男性の隣の部屋に、
 犬2匹を連れた男が引っ越してきた。

 2匹くらいだったらいいか、と気にする事もなかったが、
 そのうち子犬が産まれ、騒音に絶えられなくなった。

 ついに、警察に通告に行ったんだ。

 署長室をノックし、部屋に入ると、
 太っちょの署長がふんぞ子り返ってタバコを吸いながら
 “どうしました?”と聞いてくる。

 署長の頭上には、〈禁煙〉の貼り紙があるんだよ。

 犬の鳴き声で悩んでいる事を伝えると、署長は、

 ″犬を告訴するわけにはいかん“と答える。

 そこで男は、“鳴き声がうるさいんですヨ”というと、

 署長は、“その男が吠えてるんですか?”
 
 とのんきに聞いてくる。
 イタリアらしいシーンだよな~って苦笑したよ」

この後、目的のワイナリーに到着。

パトカーの信号無視の光景を話したら、
ワイナリーに居合わせたドイツ人女性も笑っていた。

私はイタリア人を前にして言った。

「イタリア人を馬鹿にして笑ってるんじゃないのよ。
 茶目っ気を感じるの。

 日本国民もドイツ国民も、規律を守るの。

 街にはゴミがなく、
 公共やご近所の迷惑を考えて、ルールを守る。

 過ごしやすい反面、他人から見られる自分を意識して、
 薄っすら緊張感に包まれるの。

 それに比べ、イタリア。

 日本からくるお客様の中には、
 緩い行動をとるイタリア人に触れ、
 しょうがないな、と思いながらも、
 どこか開放感に浸る人もいるわ。

 畑道に2台の車。赤信号を通過して何が悪い?
 って構えるイタリア人に、人間臭さを感じちゃうのよ!」

ドイツ人女性は「そうそう!」と相槌をうち、
イタリア人たちは、複雑そうな笑みを浮かべていた・・・

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