小雨が降るお昼過ぎ、
施設にいるお父さんを訪ねた。
カーテンから差し込む琥珀色の光が柔らかくて、
クラシックの音色に浸りたくなった。
バイオリンのCDをかけると、
お父さんは目をつむったまま鑑賞し
「珈琲が飲みたいな~」と言った。
私は1階の自販機に買いに行った。
昔、日曜の昼過ぎ、
お父さんはいつもカーテンに頭を向けて寝転び、
珈琲を飲みながらクラシックを聴いていた。
今、カノンとかアヴェ・マリアの曲がこの部屋に流れて
何だか気持ちいい。
頭の中で先の事を考え始めると、
この空気が覚めてしまうけど、
こうして今を感じると、
40年前と何も変わらない光景がここにある。