日本帰省 地元で女一人飲み その3
今回の日本帰省では、お酒を良く飲んだ。
都内で誰かと飲んだ日は、
終電間際の電車で実家の駅に到着し、
それから一人飲みをして家路に着いた。
飲み会では
「帰りの電車で気分が悪くなったらどうしよう?」
という不安が付きまとうので酒の量が控えめになる。
だから、実家の駅の到着すると、
締めのお酒を飲みたくて、ふら~っと立ち寄る事になる。
この日も0時過ぎ。
チェーン展開している居酒屋に入ってみた。
「すみません、まだ、やってますか?」
「はい。2時までやってます」
おじちゃん店長の笑顔に導かれ、カウンター席に着いた。
店内には男性グループ客の、酒で勢いを増した声が高々と響いていたけど、長い髪を結わいたアルバイトらしき女性から御絞りを受取ったら、すっかり気持ちが落ち着いた。
「熱燗ください。つまみは刺身の7点盛にしようかな?」
すると彼女はマニュアル通りに、
「すみません。こちらのメニューは2名様からなんです」
と申し訳なさそうに答えた。
「分かりました。そしたら~、
一人前でも頼めるお刺身って、どれですか?」
とメニューを開いて尋ねると、
カウンター向かいの厨房から女性が顔をのぞかせた。
「大丈夫ですよ。7点盛り。一人前でお受けしますよ!」
厨房の女性は私と同い年くらいで、
深夜だというのに、これまでの疲れを微塵にも見せず、
穏やかな笑顔で優しい言葉をかけてくれた。
おじちゃん店長は私の後ろを通り過ぎる際、
「お酒が好きなんですね~」と笑顔で声をかけてくれる。
店の人は、適度な距離を保ちながら接してくれるけど、
私を気にかけてくれる心の距離はぐっと近くにある。
真夜中だというのに、
刺身と焼き鳥、そして熱燗と冷酒を堪能し、
最後にお茶を頼んだ。
おじちゃん店長は
「どうぞ、ゆっくりと、何杯でも飲んでってください」
と声をかけてくれた。
席を立ち、御会計に向かう前に厨房の女性に、
「1人前で対応してくれて、ありがとうございました」
と言うと、彼女は
「大した事してないです。
盛り付けの見栄えが悪くなってしまい、すみません」
と柔らかく返事をしてくれた。
おじちゃん店長の
「ありがとうございました。お気をつけて」の声を心で受け止め、心の筋肉が和らいで、気持ちが軽やか。
全ての人に好かれる店、全ての店に好かれる客、
というのはないと思う。
人それぞれが感じる居心地の良さは色々とある。
私の場合、お風呂に浸かるように、心をほぐしたくて
もう1軒を求めてしまう女一人飲みの店は
優しく迎えられ、居心地が良い事。
緊張がほぐれる事。
そして食事とお酒を、ゆったりと楽しめる事。
お店の人間力にかかってくる。
おじちゃん店長は、少し前に倒れて入院し、
復帰して働き始めた事を後から知った。
だから、足を引きずるようにゆっくりと歩いていたんだ。
相手の立場に立つ事にエネルギーを注ぐ店。
「一生懸命に働くって、美しいな」と感じた今日この頃です。
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