ローマはコメディー映画のワンカットだ
私は農家の人と話す機会が多い。
「ここ数年、雪が降らなくなってしまった。
これでは春以降の水の確保が不十分だ・・・」
という嘆きを耳にしてきたけど、
私が日本に帰省する日に まとまった雪が降ってくれた。
出発の前日、
ローマ空港の近くにある安宿に泊まる事にした。
空港に到着し宿に電話をすると、車が迎えに来てくれた。
「マウリッツィオだ。宜しく。早く乗った、乗った」
せっかちで愛嬌がある所がいかにもローマ人らしい。
カーステレオから流れる懐かしい曲に耳を傾ける。
(確か、ギルバート・オサリバンだったかな?この歌手)
と思い、「いい曲ね」と言うと、
「ああ。いい曲だ。ビートルズだ」と言い、
「俺はテレビ局に勤めていたから、音楽には詳しいんだ」
と言って、携帯のビデオを見せた。
ビデオの彼は、テレビのクイズショーの壇上で
司会者とトークをしていたり、ストリップの真似をしたりしていて、会場にはドッと笑いがわいている。
宿に到着。
翌朝、8:30に迎えに来てくれるようにお願いして、
彼に挨拶をした。
目が覚めて、これからシャワーを浴びようとしている時に
ドアをノックする音が聞こえた。
ドアの向こうにはマウリッツィオがいた。
「おはよう。私、8時半って言ったけど・・・」
すると彼は
「見てみろ、この雪景色。今日は飛行機、飛ばないぞ。
どうするつもりだ?」と言ってきた。
「とにかく、空港に行くしかないわ。
まだ準備が出来ていないから、
8時半に来てもらってもいいかしら?」
私は少し不安に包まれながら身支度をし、彼は8時半にやってきた。
「第3ターミナルの出発ロビーまでお願いね」
「了解!」
走行して間もなく、彼がボタンをいじると、
天窓が開き、雪の塊がドサッと私たちの頭上に落ちてきた。
「ちょっと~!何の冗談なの?
どうして車内に雪が降るのよ!」
「畜生。いつもは反応しないくせに、
今日に限って反応しやがった。畜生!」
「なんで、天窓を開ける必要があるのよ!」
「俺は、やりたいと思った事をするまでだ。畜生・・・」
「私、濡れた服のまま旅行をするの、いやよ」
彼はガラスを閉めまま天窓をあけて車内を明るくしたかったんだけど、全部が開いてしまい、その後、車は勝手に開いたり閉じたりを繰り返している。
目先にガソリンスタンドが見えたので、そこで停車し、
車内の雪かきをしてから、バールでカフェをした。
バールに居合わせた人に話すと、笑われた。
そうだった。
彼はつい最近まで、
天然の気質で人を笑わせる仕事をしていたのだ。
車に乗り、空港に向かう路で
「マウリッツィオ、あなたって生粋のショーマンだわ!」
と叫ぶと、
「お前さんは、なんて感じがいいんだ!」と彼も叫び、
私たちは大笑いをしながら空港に向かった。
空港に到着すると、大雪の影響で全ての飛行に変更がかかり、人がごった返している。
マウリッツィオのお陰で、妙な身構えが出来た。
これから何が起きても
「まるでコメディー映画の疑似体験だわ!」
と受け止める事が出来る。
飛行機の出発時間がどんどん変更され、
先延ばしになっていく・・・・
もうちょっと、非日常感を楽しむこととします!
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