スローライフは知識がいっぱい!
シエナの隣町で行われた小さな食事会の席で、
フィレンツェ近郊でワイン作りを営む夫婦と相席になった。
イタリアでは、大抵相席になった者同士で会話を交わす。
話題はもっぱら今年の農作物についてだ。
「今年は蜂蜜が苦戦しているらしい。
アカシアなんて僅少だ。ヒマワリを植えた場所では、
ヒマワリの蜂蜜が採集できていると思うが・・・」
1980年、アジアから渡ってきた小さな蜂がヨーロッパに病気をもたらしてから、ヨーロッパの蜂が病気に侵された事等も、この席で初めて知った。
「ところで、葡萄の育成はどうですか?」
「見事に育っている」
「この水不足と猛暑に於いて、ですか?」
「ああ。土をよく耕したからね。
耕やしたお陰で、土が適度に湿ってくれているんだ」
これを聞いて、友達のアンジェロはすぐに反応した。
「一般的には、土壌に草を残す事によって、
水分が保つ、って聞いてるけど?」
「実は、そうじゃないんですよ」
中には、畑仕事に一切タッチしないオーナーもいるが、
彼は、グローブのような大きな手と日に焼けた肌をしている。
そんな彼が述べる事は真実で、
私達の知識がまた一つ増えた。
「やっぱり、その土地に住む人間の経験だな!」
とパトリッツィオが確信を込めて言った。
ここに来る途中、パトリッツィオは車の中で、
こんなエピソードを語ってくれた。
「1900年の初め、ポリネシア島の小山で農業を営む農民は、
雨水が山頂から低地に流れる際の水路を直線に引いた。
ある日、ヨーロッパ人が入り、
小山の農地全体に水が行き渡ように、
水路をユーピンのカーブに設計するよう指示した。
その後、大雨が降った。
雨水は水路から溢れ、小山ごと土砂崩れになったんだと。
やはり、その土地は、そこに住む人の経験だな!」
同時に私は、
先日、ラジオから流れてきたエピソードを思い出した。
「私は豊富な知識を持っている。足りないのは経験のみだ」
そう大作曲家サン・サーンスは語ったらしい。
沢山の情報がネットから簡単に手に入るけど、
やっぱり、現場の話に触れる機会は貴重です!
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