子供に帰ったような夏
「キヨミ、あと30分くらいしたら迎えに行くよ。
捨ててもいいようなボロボロのパンツ姿でいてくれ」
彼の電話を受けて、
私は、古いジーンズをはいて外に出た。
「あの川に行くぞ。この時期でも水が綺麗だ」
「え~、道がないじゃない」
「だから、捨ててもいいパンツが必要なんだ」
アスファルトの道から小径に入り、木陰に車を止めると
獣道を歩き始めた。
棘のある枝が彼方此方に伸びている。
「ここから降りる」
3メートルほどを滑り下りるため、
木に手を掛けたいところだが、棘のある木もあったりするので咄嗟につかまるのは危険だ。
地面にむき出しになった木の根っこを足場にしながら、
やっとの事で川まで降りた。
私もパトリッツィオも、
腕にはミミズばれの傷から血が噴き出している。
「あなた、狂ってるわ。
降りたのはいいけど、戻れなかったらどうするのよ!」
「そしたら、ここで寝ればいいさ!星が綺麗だぞ!」
子供の頃は、
空き地に落とし穴を作ったり木に登ったりしたけど、
48歳になってまで、
こんな冒険を味わえるとは思わなかった。
消毒液が染みたけど、また思い出が一つ増えました!
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