引越してきたご近所さん
携帯が鳴って、
今、パトリッツィオが私の家に到着した事が分かった。
「チャオ チャオ! 到着したのね!」
「ああ、到着した・・・」
彼の声はいつもと違って、
小さく、そして切羽詰まっている。
「いいニュースがある。
窓から樹を見てごらん!リスがいるよ」
「え~、本当に!?」
外にいる彼からはよく見えても、
部屋の中からはよく見えない。
外に出てみると、本当にリスがいた!
リスは私達の視線を感じて穴に閉じこもってしまった。
私たちは車に乗り込み、
暫くはリスの話に夢中になった。
「キヨミ、この前、リスが見たいって言ってただろ?
口にする事は叶うのさ!
しかも、キヨミの窓の前にある胡桃の樹だぞ!」
「信じられない!
早速、名前を付けなくっちゃね。
賢そうな顔つきだから、名前も賢いのがいいわ」
「じゃあ、レンツィってのはどうだい?」
レンツィとは、ついこの前までの首相の苗字だ。
「ん~彼の事、嫌ってる人もいるから、どうだろう?」
「じゃあ、マクロンってのはどうだ?
ミクロだと最小な、という意味だけど、
マクロは、巨大な、という意味も持ってるし!」
「ん~、リスの名前にマクロンね・・・
だったら、レンツィの方がましかな・・・?」
「だったら、マッテオだ」
性別が分からないけど、結局、
前イタリア首相の名前をとって、
マッテオと名付ける事にした。
今まで、普通の胡桃の樹だったけど、
今日からは、マッテオの家。
外に出る時は林檎の欠片を枝にさしてみようかな?
家に戻ってきた時に、林檎の姿がなかったら、
マッテオが両手で掴んでモグモグ食べた証拠。
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