外出から戻ると、中庭に大家のアルドおじさんがいた。
「チャオ、アルド!」
「オ~、キヨミ。
トマトなんだがな、今年は育たんのだよ」
2週間ほど前に、
「アルド菜園のトマトが成ったら、頂戴ね!」と、
挨拶がてらに交わした言葉を覚えてくれていた。
「それだったら、あなたの家で食べて頂戴。
私は間に合ってるから、気にしないで!」
するとアルドおじさんは、
「ちょっと、来てくれ」と菜園に手招きした。
どうやったら、こんなトマトが作れるんだろう?
どれも不格好だ。
シエナには
「ブルッティ マ ブォーニ 不細工だが旨い」
という名のお菓子がある。
この菜園のトマトたちも、外見は既に味わいがある。
「これ、もってきな。
火曜日、いや、水曜日頃に食べるといい」
「ありがとう! 遠慮なく頂くわ!」
美味しく食べたいから、あと5日程待ってから、
バジリコとオレガノを添えて、シンプルにいただこう。
この日の夕方、散歩に出た。
野菜に水をあげているおじさんから
不意に「チャオ!」と声をかけられたので、
「おじさん、今年のトマト、難しいんですか?」
と聞いてみたら、
「ああ。10本のトマトがダメになってしまったよ」
と言っていた。
どうして、今年は家庭菜園のトマトが難しいんだろう?
オリーブや葡萄の実はスクスクと育っているのに・・・
自然の世界は複雑なのね。
1年中食べれるトマトだけど、本当の旬は今だけ。
秋が訪れるまで、暫くトマトを楽しみま~す♪