ミケーレの新な旅立ち
ミケーレを見送るミサに行ってきた。
神父様の力強い説教に圧倒された。
「私たちの友ミケーレは
地上での巡礼を終え、橋を渡り、
神の世界に移りました。
地上では苦しみや悲しみ、困難を纏いましたが、
これからは、愛の世界で生き続けます。
皆さんは、死、を
真っ暗で絶望的な世界だと思ってますか?
明るければ、居心地よいと言えるでしょうか?
考えてみてくださ。
私達の生活が24時間、明るく照らされていたら、
私たちは幸福でしょうか?
死は終わりではありません。
変身なのです・・・」}
59歳だったミケーレのお母様はまだ健在で、
ミサの前では涙ぐんでいたけど
神父様の話を聞き入る彼女はの目は、
しっかりと何かを見据えているようだった。
ミサの後、娘のサマンタに挨拶をした。
「昨日はミケーレが手掛けたヴィンサントで
乾杯したわ。今度、
ミケーレが写っているビデオや写真を渡すわね」
「ありがとう」
彼女は、穏やかにほほ笑んだ。
誰も泣き崩れる者はいなかった。
これまで恐れていた「死=別れ」が、
このミサでは「見送る会」のように感じられた。
この日の午後、パトリッツィオと一緒に、
彼の悪友を訪れた。
そこには、放射線治療に通い続けるPの姿もあった。
「人生は一度きりなんだ」と言って、
ビールを飲み、タバコを吸っている。
彼がどんな気持ちで暮らしているか、
友達は痛いほどわかるから、
このひと時の幸せを見守るかのように、
あえて誰も、何も言わない。
キャンティの丘に面した庭先で、
ギターに合わせて、皆で歌った。
この時間がとっても愛おしく感じられて涙が出てきた。
黄昏時は、日ごろ見落としてしまうような野の花や草も、
優しく光り輝いている。
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