シエナのワイン会で思ったこと
シエナで行われたテイスティングに行った。
出展するワイナリーをチェックすると、
大手が目立ったため、
仕入れる為のワイン探し、という観点は捨て、
好奇心で参加してみた。
この機会に、市場で1本100ユーロ以上で販売されるワインを次々に当たってみた。
最初のうちは、
「凄い凝縮感だな。そして、タンニンが整っている。
口中を覆い、その余韻が長い!」と驚いたが、
次のワインも、その次に試すワインも、
「凄い凝縮感。力強い。骨格がしっかりとしていて、
でも、口当たりはエレガント」
という、同じような感想に辿り着く。
これらのワインは、殆どと言ってよいほど、
バリックの新樽で、12か月以上熟成される。
トーストされた新しい木の香りが
ワインに影響しているので、
最終的には、似たような仕上がりに感じられる。
女性に例えて言うと、体系の良い若い女性が、
同じ化粧をして、着こなしもよく、
スマートに佇んでいる。
一人の女性を見ると、
「わっ!凄いインパクト!
なんでゴージャスなんだ!」と思うが、
そういう人が並んでいると、
最終的に一人ひとりの印象が残らない。
そして、それらの女性にまた出会いたいか?と言うと、そうは思わない。
繊細なはずの白ワインに関しても、
葡萄品種ごとの素顔、
個性との新鮮な出会いを期待していたが、
樽で長時間熟成させているものが多く、
「あ、これも、ハチミツのような甘味を帯びている」
という、似たような感想を持ってしまう。
そんな中、
ブルネロが並ぶ部屋に訪れ、小さな作り手で、
伝統的な手法に基づいたワインをテイスティングしてみた。
ワインは、私に語りかけてくれた!
同じ土地で、同じ葡萄品種を使用して、
同じビンテージのブルネロでも、
小さな作り手を梯子すると、
同じカテゴリーでありながらも
トーンの違いが感じられる。
音楽に例えると、
2015年のショパンコンクールで優勝した
韓国人ピアニスト、チョ・ソンジン氏が奏でた
ショパンのピアノ協奏曲の、
今まで聴いた事のないような軽やかさ、優雅さ、
フ~っと一瞬、聞こえなくなるような微かなタッチに
かえって惹き込まれてしまう奏法が好きだが、
ツィメルマンのショパンの演奏も好き。
一方、大胆な奏法をするランランのショパンが好き、
という人もいれば、行き過ぎだ、という人もいる
ショパンという枠の中で、
曲を奏でるタッチと表現力の違いから、
ピアニストの個性が感じられるように、
小さな作り手のワインは、
トーンの違い、個性を感じさせてくれる。
生まれながらにして才能を授かったピアニスト。
神様から
素晴らしいポテンシャルを与えられた土壌で育つ葡萄。
個性。
売れるように、
マーケティングを駆使してブランドを作り上げ、
誰からも「素晴らしい!」
と称賛を浴びるワインではなく、
「私は、この葡萄をこう奏でたい」
という作り手の意志が感じられるワイン。
当然、ヴィンテージによって、
その年の気象状況の違いから、味に違いが出てくる。
そういうワインと出会った時に、
私の感性はどう反応するか?
ある人には受け入れられ、
ある人には敬遠されるかもしれないけど、
そういうワインとの出会いが
益々、楽しみに感じられる今日この頃です!
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