ありがとう、は大きく!
今日も異常に暑い。
バス亭は、直射日光にさらされている。
こんな時に限って、
次にやってくるバスは私の家まで届かないけど、
これ以上、ここに居座ってられず、バスに乗った。
バスは、全ての窓 全開でやってきた。
何も考える事が出来ず、ボーっと座っていると、
チョンチョンっと、左肩をつつかれた。
後部席を振り返ると、
移民系の、10歳くらいの女の子が座っている。
「このバスはタベルネ ダルビア方面に行きますか?」
「うん。行くわよ。
もう少しで、その地域に入るわよ・・・
はい、ここからタベルネ ダルビア地区」
私は、標識を指差した。
バスが停車し、地元の人が下車していくけど、
彼女はまだ座り続けている。
「一体、どこで降りたいの?」
「タベルネ ダルビア地区に入ってから、
5つ目のバス停で降りるんです。
橋の手前だって、友達が言ってます」
それから、私たちはバス停を数えた。
「3つ目・・・4つ目・・・はい、次が5つ目よ!」
すると彼女は、
「Grazie!」といって席を立ち、
扉の前で私に向かってもう一度、大きな笑顔で
「Grazie ancora(重ねて、ありがとう!)」
と言って降りていった。
真っ直ぐ「ありがとう!」と言われて、
私はすっかり嬉しくなり、
それまで垂れ下がっていた頬がグ~ッと引きあがった。
それからどんどん人が下車し、
バスの中には、私一人になった。
終点に到着。
ここから長い坂道を登り続けて、
私の家まで歩くしかない。
バスを降りようとすると、
「どこに行きたいんだい?」と運転手が声をかける。
「2区間先までです」
「なんだったら、アクアボッラまで乗っけてくよ!」
「え~、本当ですか! ありがとうございます」
バスは、1区間先の広場まで走ってくれた。
この炎天下で、半分の距離を楽できるのはラッキーだ。
私は、さっきの女の子の笑顔を思い出した。
運転席に行き、
「本当にありがとうございました。助けられました!」と、大きな笑顔で、真っ直ぐに挨拶した。
運転手さんも、嬉しそうだった。
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