願い
夜の10時。
外が、藍色に染まった頃、
部屋の西と東の窓を開けて、
夜風の通路を敷いた。
ひんやりとした風は、湿った土の香りがして、
時々、菩提樹の甘酸っぱい香りが部屋を通り過ぎる。
私とティティちゃんは、ベットに横たわって、
ラジオから流れるオペラに浸かっている。
お腹も満たされて、
あとは、ゆっくりと眠りにつくだけ。
気分は解放されているはずなのに、
最近、どうしても、難民について考えてしまう。
難民キャンプで暮らすロヒンギャの民や、南イタリアのランペドゥーザ島に漂流するアフリカ人は、
「ただ、平和に暮らしたい。それを夢見ています」
と言っている。
悪いことをしていないのに、
囚われて、殺されてしまわないように
空腹に飢えて死んでしまわないように・・・
生き延びよう、と逃げてくる人が沢山いる。
イタリアでは、
毎日のように難民の話題がニュースで報道され、
擁護の意見と、受入れ拒否の意見が述べられている。
ハンガリーでは、移民の流入を阻止する為、
国境に高い壁を設置する計画がある。
「襲われる心配なく、安心して生活したい」
それだけの事。こんな素朴な日常を夢みて、
命がけで逃げてくる民が、
大切な人と安心して眠れますように。
お腹が満たされますように・・・
それだけの願いすら許されない、
という事になりませんように・・
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