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2015年1月19日 (月)

今日の冒険

アンナとマウロ、そしてパトリッツィオと
アペリティーヴォを楽しんだ。

1月だというのに暖かく、外のテーブルで過ごしたけど、1本のワインが空になる頃には、糸杉の輪郭も分からなくなるほど辺りはダークブルーになって、冷たい空気が漂い始めた。

「さて、モッラも車で待っていることだし、
 もう帰らないとね」

私たちはまた近いうちに会う約束をして、車に戻った。

さっき川遊びではしゃいでいたモッラの毛は、
まだ少し湿っている。

車を走らせ、3分ほど過ぎたところで、
「見て見て、ほら!」とパトリッツィオが口走る。

彼の視力は抜群で、
遠くの林に潜む鹿や路上にいる小さなカエルまで、
何でも目に入る。

暗がりの中を走り抜ける影を見て、
私たちは子鹿だと思った。

しかし影は草むらに逃げこむことなく路上をうろつき、
そのまま直進し続けた。

そして、道路脇には綱を持った男性の姿があった。

車内で大人しくしていたモッラも興奮して吠えている。

犬の言葉は分からないけど、
モッラも、私とパトリッツィオと同じ気持ちでいる。

パトリッツィオは車の窓を開け、
逃走している犬にモッラの臭いを感知させ、
なんとか寄りつかせようとした。

田舎道だけどカーブがあって、
前方後方から車がやってくる。

ふと気づくと、路上の犬は2匹になっていた。

「あれ、2匹の犬が逃げてたのかしら?・・・
 あっ、モッラだ!」

モッラはいつの間にか車の窓からピョンと飛び降り、
失踪する犬と路上でじゃれ合っている。

このままじゃ、引かれちゃう。

「モッラー、モッラー」

大声で呼ぶと、モッラは私を目がけて猛スピードで戻り、その後を、失踪犬がついてきた。

戻ってきたモッラは、いつもの癖でゴロンと横になり
一瞬お腹を見せると、また興奮して走り出そうとしたので、私はもがくモッラにかぶさり、羽交い絞めにした。

そして、近づいた疾走犬はまた向きを変えて走り出し、
とうとう姿が見えなくなってしまった。

綱を持った男性が私たちの車に追いついた。

彼もかなり動揺している。

「名前は何ですか? 叔父さん、犬の名前!」

「知らんのだよ。今朝、友達から預かったばかりで
 飼い主は今日から旅行に出てしまって・・・」

「犬を見つけて捕獲することが出来たら、連絡します。
 電話番号を教えてください」

そう言って、パトリッツィオと男性は
お互いの電話番号を携帯に入力しあった。

帰り道、私達は一縷の望みを抱きながら観察したけど、
影は現れることなく、私の家に到着した。

「犬、家に帰ってくれるといいな~」

「帰れるさ。心配なのは、車に引かれないことだ」

するとその時、
パトリッツィオの携帯がブルブルっと振動した。

「あ~、はい。ふん・・・ファンタ~スティコ! 
 si, si....美味しいビスケットをやってください
 ボナセーラ」

さっきの男性からの電話だという事は、
私にもすぐに分かったし、
パトリッツィオの「素晴らしい!」との相槌から、
良い知らせだという事も分かった。

電話を切るパトリッツィオに、
「それで、それで~!」と迫ると、

「キヨミに色々な想像をさせてあげるから、
 言わな~い」とじらす。

私は大声をあげて「教えてよ~!」を繰り返しながら、
彼をゆさぶった。

「今日の11時に犬を預かった。そしてランチをして
 夕食を食べる前に、散歩に出かけた。
 最初は大人しくしていたけど、
 車の通りがある道路に出た途端、
 首輪をふりきって、逃げ出した。あの後、
 彼が家に戻ると、犬は門で待ってたんだって。
 そして、犬の名前はミルコだそうだ」

私は、嬉しくて大きく叫び、

隣でパトリッツィオも
「感激するな~」といって涙をぬぐった。

「きっとモッラに言われたのね。
 家に帰りなさいって!」

ハプニングがハッピーエンドで終わり、
さっきの出来ごとが冒険になった。

喜びを皆で共有できて、いい気分です!

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