ずっと身近な事
また薔薇の花が増えた。
大晦日のシエナは、どのレストランも満席で賑わって
いたけど、カンポ広場に近い移民が経営するこのバールはガラガラで、私たちは唯一の客となった。
ワインを飲んでいたら、褐色の肌をした少年が
薔薇の花束を抱えて店内に入って来て、
私達のテーブルで停まった。
パトリッツィオは黙って少年に10ユーロを差し出すと、
少年は薔薇の花を私に置き、
沢山の小銭でお釣りを揃えた。
「枯れ始めてるな。持ち歩かなくてもいいんだよ。
邪魔だったら、そこらに置いてけ」
パトリッツィオはそう言うけど、私にとっては、
綺麗にラッピングされた花束や高級な胡蝶蘭より
この薔薇が嬉しい。
この時、外の温度はマイナス12度。
私たちより遥かに薄着の少年は、
店を渡り歩いて生活費を得ようとしている。
ちなみに同日、
私たちの税金で給料を得ているローマの交通警官の
85%は病欠をした。
「ペストより深刻だな!」とパトリッツィオは笑った。
地位があり話術に長けた人の思想を聞くと、
偉いな~と思うけど、
川に行くとゴミを拾って帰ったり、
移民からモノを買ったり、
そういう事をさり気なくやっているパトリッツィオも
負けずに偉い。
10日ほど前、イタリアのテレビで、
富士山のゴミを拾う日本人少年が紹介されたらしい。
パトリッツィオはその少年の事を語る最中、
感動にのまれて一瞬、涙を拭いた。
私も何だか影響を受け、
元旦の朝に ごみ袋を持って家の近所を歩いて回った。
ゲームセンターの ぬいぐるみを釣るマシーンのように、
棒でつまんだ空缶やタバコの箱がゴミ袋に入ると、
獲得できたようで面白い!
大袈裟に構えたり考えを練ったりせず、
「単純で小さな事に気付いたら実行!」
を重ねた方が健全かな?
| 固定リンク