笑う門に福来て、来て!
友達四人が集まり、レストランで食事をした。
クリスマスに食される肉は地域ごとに異なり、
アメリカでは七面鳥、スペインのマドリッドでは子羊、
北イタリアでは、ザンポーネと言って
豚のひづめ付前足に様々な部分の肉を詰めた
巨大ソーセージのようなものを食べ、
ここシエナでは、
去勢された雄鶏の煮込みカッポーネを食べる。
当然 私たちは、カッポーネを注文した。
シエナ育ちのMは、
「母さんが作ってくれた味とはかけ離れてる」
と感想を述べ、
「マンマごとに、レシピは異なるからな」
とパトリッツィオも同意した。
肉を平らげ、注意のよく行き届いたカメリエーレに
お皿が引き取られると、
今まで避けていたある話題に移っていった。
「酷いと思わない?
クリスマスの2日前に解雇を知らされるなんて。
私ね、彼のお父さんの介護の女性と、
コープで買物をしていたの。
相当混んでたわ。
レジに並んでいたら電話がなって その知らせを受け
思わず、泣いちゃった。
お店を出ると、
巨大な体系をしたポーランドの介護女性が、
“何、あった?”と聞くから、訳を話したの。
そしたら、少し間を置いて、
“泣いた理由、それだけ?”と言って手を振りかざし
(やってらんないよ~、全く)
と言った感じであしらうのよ!」
そう言いながら彼女は笑うもんだから、
私たちも笑ってしまった。
「凄いのよ、そのポーランド女性。混んでる店内で、
普通だったら、避けながらカートを引くでしょ?
彼女の場合、ガーンッ、ガーンッ、て
周りのカートを弾き飛ばしながら、
わが道を進んで行くの!
みんな、(アワワワワ・・・)って驚いてた」
「その彼女、幾つなの?」
「63歳よ。彼のお父さんの事も、
ヒョイッて軽々持ち上げちゃうの。朝食の時、
“ブリオッシュ、ビスケット、どっち選ぶ”って
聞くから、お父さんが“ブリオッシュ”って答えると
豪快にちぎって、丸めて、
“へい、お待ち。美味しいブリオッシュ!”って
力強く手渡すのよ」
深刻な話題だったのに、ラテンだと
どうしても笑いの方向へと向かってしまう。
「そんでオヤジさん、
その巨大介護婦に喜んでるのかい?」
とパトリッツォがMに尋ねると、
「ああ、オヤジは満足してるよ」と上機嫌。
「そう言えば、俺の93歳になる叔父さんは
ペルー人の介護がいる。
ある日、彼女はバカンスをとって来れなくなった。
急遽、やってきたのが大男さ。
男は日頃、大工をしてるから、
食事も掃除も全くダメで、その日の事をつまみに
叔父さんが可笑しく語ってくれたよ」
とパトリッツィオがつい先日の事を語った。
イタリアには、介護の職を求めて、ルーマニアや
ポーランド、ペルーから沢山の女性がやってくる。
祖国には孫のいるような年齢だけど
50代~60代の彼女達は、驚くほどの体力と気力があり、
イタリアのお年寄りに元気を与えてくれる。
ある御爺さんは、急に友達の来訪が増えた。
皆、彼の介護さんと挨拶を交わしたいのだ。
人それぞれ、色々な考えがあるけれど、
お金を沢山持っている人が その分、笑って暮らしているか?というと、そうでもない。
解雇された彼女はとても明るい性格で、
いつも周囲を笑わせてくれる。
始めの一歩さえ踏み出せば、何かしら出来るはず。
問題を抱えていても、
テーブルに笑いを提供してくれる彼女を眺め、
「私も、この逞しさを見習いたい」
と、感化される今日この頃です。
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