今年の葡萄は、どんな感じでしょう?
「今年の葡萄は、どうですか?」
この季節になると、
レストラン関係者やワイン好きの方から、
こういったメールが入る。
「今年もいい感じです!
美味しいワインが出来そうですよ!」
なんて事を言えたら、どんなに楽だろう。
今年は2002年と類似している。
2002年、あまりの多雨の為、
ブルネロの創始者「Biondi-santi」をはじめ、
いくつかのワイナリーではブルネロ作りを断念し、
収穫した葡萄は、ワンランク下の格付ワインや
テーブルワインに回された。
2002年と2014年の違い。
それは、今年はまだ希望が残されている、ということ。
2002年、夏から続いた雨は、
収穫時期に入っても止むことがなかった。
しかし今年の夏は、雨と晴れ間が交互に訪れ、
9月に入った今、日中は残暑が感じられる。
ブルネロ用の葡萄の収穫まで、あと約1カ月。
この時期、ブルネロ用の葡萄に栄養を凝縮させるため、
いくつかの房は切り取られ、大胆に葉を取り除き、
葡萄に直射日光を与る作業が行われる。
これまで、葉っぱは、葡萄を雨から守ってくれていた。
しかし、これからは房が空気にさらされ、
多雨が降ると、どうしようもなくなる。
水分を含んだ葡萄の成分が薄まるだけではなく、
水を吸収しすぎると、葡萄の粒が膨らみ、
いくつかの果肉は破裂し、果汁が周囲に飛び散り、
そこからカビが発生しはじめる。
そうなると、健康的な葡萄の収穫量が少なくなる。
今年、葡萄を手掛ける農夫達は、
雨によるメンテナンスの為、通常以上に働いてきた。
これからも、葡萄達への働きかけは続く。
昔、シエナのエノテカで働いていた頃、
2007年ヴィンテージについて、世界中のジャーナリストが最高な褒め言葉で書きあげので、この年のワインが飛ぶように売れていたことを思い出す。
自然環境をそのまま受け入れた葡萄は、
酵母と酸素の協力を経てワインに変わり、
発酵期間も、熟成期間も、
そして、瓶詰めされてからも生き続ける。
『有名大学卒業者=優秀な人格』と、
人間の価値を測れないのと同じで、
『良好な天候のコンディション=価値のあるワイン』
とは言いきれない。
アルコール分が強いワインが好きな人もいれば、
少し軽めの飲み口の方が合う人もいる。
世界中で、規格の統一された商品が流通される中、
ワインを始め、自然と人間とのコラボレーションで
生み出される商品は、今までとは違った角度の「品質・価値観」をもって、消費者を楽しませてくれるんじゃないかな?
そうあって欲しい・・・
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