子供に戻れる夏
「民よ、進め! 約束の地に導こう!」
杖代わりの枝を手にした途端、
パトリッツィオはモーセに豹変した。
「民よ、約束の地はもうすぐだ!
見よ、ヨルダン河だ!」
車を止めてから、川岸までは獣道。
愛犬のモーラちゃんは、野生動物の臭いを嗅ぎながら、
狂ったように走りまわり、
私も、右・左に重心を傾け、
アスレチックを楽みながら進んだ。
川岸に到着すると、マットを広げ、
パトリッツィオは新聞を読み始め、
私はモッラちゃんと走りまわった。
「キヨミ~、
こんなに小さなトカゲが、新聞を読みに来たぞ~!」
「あ~、彼は小さいけど、教授よ~!」
この日、3冊の本を持ってきたけど、
今日も無駄だった。
水流や木漏れ日、
様々な形をした岩や石を眺めている方が面白い。
途中のガソリンスタンドで買ったサンドイッチと
家から持ってきたワインで昼食をとった。
「キヨミ、このレストランは3つ星だな!」
「ノー、ノー、3つ太陽よ!」
蝉は姿を消していて、自然は秋へと移り変わっていた。
今年、あと何回 戻ってこれるかな?
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