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2014年8月15日 (金)

不格好だけど、美味しい味

「キヨミ~、居るの~?」

隣に住むロベルトが窓ガラスを叩いている。

「さっきアルドがノックした時、キヨミは不在だったね。はい、これ。アルドから」

アルドとは、私のアパートの大家さん。

じっとしている事が出来ない性分で、
家電の店を経営しながら、暇が出来ると
草刈りをしたり、門のペンキを塗ったり、
猟犬の面倒をみたりしている。

家庭菜園も、アルドの生活の一部。

奥さんのアンナは、
「あんなに働く男、そういないわ!」と誇らしげで、
彼女のかかあ天下ぶりからして、その昔、
アルドは色々な女にも忙しく尽くしていた様子が想像できる。

ロベルトは私に、
大きくて真っ赤なトマトが乗った皿を差し出した。

「ワ~オ! Grazie!」

翌朝、外にでるとアルドがいた。

「アルド~、ありがとう!
 あのトマト、美味しいわね~
 まるでスイカみたいに甘いわ!」

すると、普段から威勢の良いアルドの声は更に弾んだ。

「そうだろ! 
 熟れるまで、そこの畑になってたんだ。
 青い状態で出荷され、店に並ぶのとは違うんだぞ!
 孫のエリーザなんて、
 “お爺ちゃん、トマトが食べたい!”
 ってはしゃいでるよ!」

私は、幼少の頃を思い出した。

田舎を訪れると、
手ぬぐいを首にひっかけたお爺ちゃんは

「きび、食べなせ!」と言って、
茹立てのとうもろこしをザルに乗せて出してくれた。

歯並びの悪く、肉厚のトウモロコシに塩をふりかけながら、私達兄弟は、はしゃいで食べた。

あの頃のお爺ちゃんのトウモロコシにも、
アルドがくれる果物やトマトにも、
時々、虫が見つかる。

この前、キアナ牛の牧場で友達とバーベキューをしていたら、農園のオーナー、マリオがテーブルにトマトを置いた。

「今、もいだトマトだよ!」

友達H子は、丸ごと出されたトマトを手で掴むと、
「トマトは、こうやって食べんのよ~!」と言って、
ワイルドにかぶりついた。

私は「あ~ぁ、虫がいたら、どうすんの!?」
と言って笑った。

ここはキアナ牛が美味し隠れ家なのに、
トマトの美味しさにも軍配があがった。

食材への拘りは、
嬉しい事に、自然環境保護にも連携している。

〈作り手が見える野菜は安心〉とか、
〈無農薬は体に良い〉とか言われているけど

私の場合は、そういうロジカルな観点以上に、

《あの時の味が、一緒に過ごした人や、
 楽しかった普段着の光景を思い出させてくれるから》

という理由で親しんでいるような気がする。

ちょっと不格好な野菜達を美味しくいただいてます!

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