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2014年6月18日 (水)

ある農園の一日

キャンティの作り手を訪れると、
彼らは澱引作業に奮闘していた。

発酵・熟成の工程で、
ワインには酵母や酒石などの澱が発生する。

これらの澱を取り除き、
ワインをクリーンにしてから瓶詰の工程に入るが、
この農園では、清澄の際、
ベントナイトという粒状の粘土を使用する。

ワインが貯蔵されているステンレスタンクに、
ベントナイト(ワイン100ℓにつき、20g)を入れる。

するとベントナイトは浮遊している澱を捕まえながら、
15日間くらいかかて、
ゆっくりとタンクの底に沈んでいく。

そして、上澄みの綺麗なワインを、
荒い目の紙フィルターにかけ、その後また、
別のフィルターにかけて、ワインは瓶詰される。

今、無農薬ワインのブームで、ネットなどを見ると、

「このワインには、二酸化硫黄が使用されていません」とか、「このワインは、旨みを逃さないため、ノンフィルターです」という表記をよく見かける。

一般的には、葡萄がワインに代わる工程で、
若干量の二酸化硫黄(酸化防止剤)が使用される。

二酸化硫黄は、酸化防止、雑菌の抑制、殺菌、その他、
ワインの色・質を安定化させる為に働きかけてくれる。

ワインの見本市で、
「このワインには、二酸化硫黄が使われていないんだ」

と作り手から説明を受ける度に、

「そうですか。
 ところで、どのくらい保存がきくのでしょうね?」

と訪ねると、どの作り手からも、

「まだ実証データはないから正確な事は言えないけど、
 直ぐに飲んで欲しい」という答えが返ってくる。

御客様の中には、「いつ飲もうかな?」と、
待つ楽しみをも味わっていただいている方も多いので、
体に害を及ぼさない量の二酸化硫黄の使用、不使用について、私はあまり神経質に考えないことにしている。

そして、フィルターに関して、
過度な濾過によっては、色や味を若干損なう事はあるが、失うこと=マイナス、とも言い切れない。

ある日、購入したキャンティクラッシコを飲んでみたら、
あまりにも成分が凝縮され、まだタンニンが強かった。

作り手には、「あと2~3年後経つと円やかに整い、
より美味しいく飲める」と言われたので、
このワインは、私の倉庫で眠っている。

一方、このキャンティの作り手は、
フィルターをかけているせいか、非常に飲み口がよい。

葡萄本来のポテンシャルが高いので、
フィルターにかけられた後、「薄まった」という結果にならず、むしろ、お連れする日本人の御客様から「美味しい!」と感想が漏れる。

この日は、ハプニングに奮闘している彼らを垣間見た。

澱が底に溜まった状態のタンクを傾けてしまい、そのため、タンク全体に、また、澱が舞いあがってしまった。

また新たに、澱が沈殿するのを待つ必要があるが、
ドロドロ状態のワインを目にすることが出来た。

このタンクには200リットルのワインが入っているので、ベントナイトは40gしか使用していない。

「こんなにドロドロした部分があるということは、
 澱が沢山あるっていうことかしら?」

「この作り手は、二酸化硫黄の使用量が少ないから、
 もし、ノンフィルターで瓶詰めしたら、
 瓶内に入る澱は、ワインに影響を与えないかしら?」

イタリアの小さな作り手は、完璧ではなく、
時に、失敗をしでかす。

「こんな状況、見られては困る」とか

「こんな時に、何で来るのよ!邪魔ね!」

といった感覚は全くなく、
このような状況をも私に説明してくれて、

「汚い手で、御免なさい~!」

と言いながら握手を交わしてくれる。

今、彼らが向き合っているワインは、
キャンティ2013年もの。

ステンレスタンクからグラスに注いでくれたワインは
美味しかった。

瓶詰めして2か月経つと、
この前まで、やんちゃであどけない女の子が、
大人の女性としての落ち着きを見せ始めるように、
落ち着いた状態になる。

秋に、この2013年のキャンティを飲んでみよう!

「あんな光景もあったっけ~!」とほくそ笑みながら!

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