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2014年6月14日 (土)

日常生活の隠し味

夕方、パトリッツィオに電話をした。

「元気?」

「ああ、俺は元気さ。キヨミは?」

「私は、落ち込みモードなの。元気ない」

「どうして?」

「理由は分からないわ。
 天気と同じで、操作できないのよ。
 今日は、こうなの。今からバールで会えるかしら? 
 翻訳で、部分的に分からない個所を教えて欲しいの。
 でね、私、お腹が緩くて、
 あまり遠くまで行けないんだけど」

「だったら、今からキヨミの家に行くよ。じゃあっ!」

30分後に彼はやってきて、私は赤ワインで出迎えた。

「結婚式の通訳を頼まれて、民法の翻訳しているけど、
 部分的にすっきりしないのよ」

そういって原稿を渡すと、
彼はソファーに深く腰掛けて、
大きな声で真面目に読み始めた。

「民事婚。
 新郎フィーニ パトリッツィオ、新婦 オタワ キヨミ」

私は、プッと吹き出した。

彼は、抑揚とジェスチャーと、
そして間をしっかりと置きながら、読み上げる。

「ちょっと待って。このセンテンス、どういう意味?」

「キヨミは、難しく考え過ぎ。
 例えば、家にスペースがあるとする。
 それを、車庫にするか、犬小屋にするか? 
 家族にとって大事なことは、
 夫婦で平等に決めなさいって事だ」

「あぁ、なるほどね!」

普段 使い慣れない言葉と文脈で、頭がこんがらがったけど、彼の助けで、紐がゆっくりと解けてきた。

今朝、ローマの領事館や文化会館に問合せをしたけど、
婚姻に関する民法の翻訳見本は無いと言われた。

でも、こうしてパトリッツィオがゆっくりと、
分かりやすく説明してくれる。

そう言えば、さっき実家にスカイプをしたら、
姪っ子が泊りに来ていて、

「これから、お婆ちゃんと一緒にご飯を作るんだ!」
と言っていた。

パトリッツィオと私の母は、
美味しい時間を仕上げてくれる隠し味。

長閑に暮らす彼らのペースに触れると、
「守られている」という安堵感のスパスが効いて、
私の日常はマイルドで柔らかく仕上がる。

忙しい時は、やるしかないけど、
私も、マイルドな隠し味のスパイスになれるよう、
無理に忙しく自分を追い込むのは、
私好みの味とは違うかな? 

と感じる今日この頃です。

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