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2014年6月 5日 (木)

スローライフとスローフード

ブルネロの作り手宅に到着した時、
コック歴45年のレーダおばさんは、
アーティチョークの下ごしらえをしていた。

「4月1日頃から収穫を始めたけど、
 これが畑に残っている最後ね。
 綺麗とは言えないでしょ~・・・
 ルチアは捨ててしまいなさいよ、って言ったけど、
 そぎ落としたら、少しは食べれるところが残るわ」

と言って、皮をむいて小さくなったアーティチョークをレモン水に入れていた。

「ご飯よ~」

ルチアママの号令で、私達はテーブルについた。

小麦粉と卵でこしらえた生パスタも手づくりだけど、
ソースのラグーも、
彼らが飼育している豚が使われた自家製だ。

あまりの美味しさに、おかわりをすると、ルチアママは、唐辛子入りのオリーブオイルをかけてくれた。

同じ料理でも、
唐辛子とオリーブオイルの刺激が加わると、
味に深みが出て食欲が増進される。

この後、ソーセージ入りの卵焼きと、
自家製の猪の生ハムが並んだ。

本来、猪のハムには、脂身の部分がない。

でも、このハムに脂身があるのは、
豚と猪のあいのこだから。

「昼になると、豚達は山にピクニックに行くのさ。
 そこで、お母さん豚は猪に出逢い、
 赤ちゃんが生まれるんだ。」

と語ってくれた。

この脂身はさっぱりとしていて、いくらでも食べれる。

豚ちゃん達は、好きな時に山に出かけ、猪と恋に落ちて、この農園に戻ってきて、ご飯を食べるという、長閑な生活をしているけど、最後は、食卓に並んでしまう。

いつもだったら、
「豚ちゃんが可哀想・・・」と思うところだが、
今回は、何かがまとまって感じられて、
それを当然のように受け止めている私がいる。

男性が愛情を持って動物を世話し、果実を栽培し、
女性はきちんと、それを料理する。

昼食は13時からと、きっちり決まっていて、
農園の舵をとる息子のエリアが、テーブルの上座に着き、
ルチアママは下座に着いて、
料理が変わるごとに、皆の皿を取り替える。

食事中、料理の写真を撮ることが、
とっても不自然なことに感じられて、
シャッターを切るのを止めた。

肉、野菜、卵、オリーブオイル、ワイン、果物は自家製。

共働きで、
出来合いの御惣菜や外食に依存する率が高くなる中、
こういう家族の食事の風景が、神聖に思えた。

家族の絆、家族の健康、スローフード、スローライフ

そんな言葉を点で捉え、
それぞれの定義を探る必要はない。

ここにいると、それらが一つの空間に当たり前に存在していることが肌で分かる。

私は一人暮らしで、一人で食事をすることが多いから、
このランチの印象が、とっても味わい深く感じられた。

何もかもが美味くて、その余韻は長い。

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