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2014年6月24日 (火)

私流、自分磨き

郵便局に行くと、
いつものように、局員は笑顔で迎えてくれた。

「キヨミ、久しぶり! 元気だった?
 あの中国人、毎日、30箱は発送するようになったよ。
 朝、郵便局に寄って、それから、ボローニャや
 フィレンツェ、ローマのアウトレットに仕入に行く。
 そこで商品の写真を撮り、直ぐにネットにアップ。
 そして、翌日には、発送。
 200ユーロで仕入れるカバンを倍で売るのさ。
 俺が中国語を喋れたら、
 俺も同じ事をやれるんだけどな~・・・
 キヨミ、日本人はブランド買わないのかい?  
 キヨミの仕事は最近、順調かい?」

私は動揺した。

この郵便局に通う中国人男性は、
最初、週に10箱くらいしか発送していなかったけど、
今では、凄いボリュームになっている。

自分のキャパがとても小さく思えて委縮した。

(ブランド・・・お金儲け・・・)

この前、友達とランチをする事になり、
私はある食堂を指定した。

どんなにお腹いっぱいに食べても、10ユーロでたっぷりお釣りが来るセルフサービスの店で、厨房では、シエナのオバチャンが料理をこしらえている。

友達は、レース編のカーデガンと
つばの広い帽子をかぶってやってきた。

「あら、どこのお嬢さんかと思ったわ! 素敵ね~!」

「ありがとう。お母さんの形見の服なの。
 そして、帽子は、
 キヨミさんからプレゼントしてもらたやつよ!」

そう聞いた瞬間、
私の気持ちは、淡く優しい空気に包まれた。

「ねえ、キヨミさん、あそこにピアノが置いてある!」

「本当だ! 
 いつか、この店で小さなパーティー出来るかもね!」

と言って、私達は喜んだ。

半年前、友達のエリーナにも
「いつも違う服ね。衣装持ち!」と言うと、

彼女も、「お母さんの服よ」と答えたのを思い出した。

今朝、まだベッドでぼんやりしていると携帯が鳴った。

つい最近まで、
シエナのコーラスの責任者を務めたクララからだ。

「キヨミ、明日の朝、私と一緒に同行して!
 ある市の文化部門の担当者に、
 例のプロジェクトの件を話しに行くのよ。
 先方は、とても関心を示してるわ!」

昔は、行政から補助金が出て、
音楽家はコンサートを主催することが出来たが、
今では、税金を使うことが出来ない。

そんな中、クララは、
シエナの街にクラシック音楽を響かせようと、
いつも、人とコンタクトをとっている。

クラシックの公演に詩の朗読や演劇を取り入れたり、
または、ワインや本のプレゼンテーションを、
音楽を通じて表現したりと、
音楽の力で、あるテーマに息吹を吹き込み、
観衆も主催者も楽しむ、といった趣旨。

「それと、今日の16時に中国人留学生が
 歌のレッスンに来るから、キヨミも来て!」

「了解! じゃあ、後でね!」

私の周囲には、ブランドを身につけない友達ばかりいて、忙しく動いているけど、お金儲けにはなっていない人が多い。

でも、彼らは、私を惹きつける世界観を持っている。

モノの考え方がオリジナルで鮮明、
そして自分のテリトリーを開拓している。

それは、全てがダイナミックとは限らず、
静かな世界観を、確固として持つ人もいる。

彼らが部屋着姿でも、お化粧をしていなくても、
そして、近所の普通のバールで過ごそうと、
その時間は私にとって輝いている。

中国に渡るブランド品の箱を目にして、考えてしまったけど、目が覚めた!

この手のカテゴリーで商売する人、また、
ブランドを非難して、自分を正当化する必要もない。

むしろ、自分が品格が落ちる。

人それぞれだ!

私が求める豊さとは、目に見えないものであって、
それを身にまとう人は、地味に見えることが多い。

それを見れる心の視力が霞んでしまわぬように心がけるのが、私流、自分を磨くことだと思う、今日この頃です。

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