一つ屋根の下
朝の食卓で父が、
「お父さん、幸せだよ。
こんなに美味しい朝ごはんが食べれて。な~!」
と照れ笑いしながら話し、
「キヨたんも、
お母さんの通っている美容院に行ったらどうだ?
お母さん、髪型変えたら、
もっと美人になっちゃったよ!」
と言いながら、納豆ごはんを食べている。
そんな父の会話に、
母は、少し誇らしげに笑みを浮かべている。
私が、「ちょっと便秘気味だ」と言うと、
私の気づかぬうちに母は家を出て、その後、
「女医が教える、便秘治せます」という本と共に、
戻ってきた。
昨日は、女友達と日比谷のガード下で飲んだ。
帰り際、彼女は私に、お土産をくれた。
どうやら、和菓子の詰め合わせらしい。
家に戻ると、ソファーで転寝していた母が起きたから、
私はその日の出来事を語った。そして、
「お父さん、甘いもの好物だから、お父さんに、
包みを開けてもらいましょう」と話している矢先、
お父さんがトイレの為に起きたから、
「お父さん、
ご家族の皆さんでどうぞ、っていただいたわ!」
と差し出すと、お父さんは、
あまり感情を表さずに包みを開け、
当然の流れで、和菓子を口に頬張った。
普段だと、母は、
「寝る前に食べちゃ、ダメよ!」と叱責するところだが、その時は黙っていた。
私は、この和菓子の包み紙を、
お気に入りの文庫本のカバーにした。
今、私たちは通い合っている。
家族は、
いつでも、一つ屋根の下に居れるとは限らないし、
遠く離れていても、心が通い合える。
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