食事会
私は、5~6人に向って話すことはあっても、
30人は滅多にない。
「お母さん、私、緊張してきた。
顔が引きつっているわ!」
すると母は、
「キヨさん、ゆっくりと喋ってね。
そうしないと、聞いている方はついて行けないから」
と言った。
「あら、私、そんなに早口かしら? イタリアでは、
大きな声で、テンポよく話さないと、
乗っていけないのよ。仮にボ~ン、ジョ~ル、ノ~
み~な~さ~ま~なんて言ったら、
皆、寝ちゃわない?」
日本人とイタリア人の喋り方は、車の運転と似ている。
イタリア人の運転は、時速100キロが当たり前。
時々、120キロや140キロになることがある。
助手席で、「怖い、怖い! 速度を落として・・・」
と言うと、
「そのほうが危ないよ。波が乱れて、事故になる!」
と返事が返ってくる。
実際、お年寄りが時速60キロくらいで、フィアット500を運転していると、リズムが乱れ、運転手は冷やっとする。
ここは日本だから、
日本の速度に合わせた方がよさそうだ。
会話もゆっくり、そして声も穏やかに。
テレビで国会中継を見ている父が、
「安倍さんは早口なんだよな~、
何言ってるのか、よく分からない。
その点、小泉さんはパーっと話て、ピタっと止まる。
その間の取り方が良かったな~」と言った。
「キヨさん、難し話、しないでね。
お母さんの年になると、分からないから・・・」
そんな両親からの忠告に、
なんだか、気持が落ち着いてきた。
今回の帰省中、中学や短大の女子会(おばちゃん会)、
そしてセレブっぽい香りが漂う講習には、
バブル期を彷彿させるようなミニスカートで臨んだけど、この日は、ジーパンとローヒールを選んだ。
会場に到着すると、千葉大学のT教授から、
「キヨミさん、本日は、とにかく、楽しい食事会!
講座のような内容にはしないでくださいね」
と言われた。
「はい!」 と笑顔でこたえつつ、
今度は、気持が引きつった。
この日の為に私が準備したこと・・・
それは、オリーブの品種や認定についての知識、
オリーブがオリーブオイルに変わっていく工程などで、
今回の趣旨とはズレていることを悟った。
私の隣には、この地区でイタリア語を教えている
アドリアーノ氏が座った。
T教授が、写真を投影機で映し出し、
それについて、私は、マイクで説明をした。
1枚の何でもない写真なのに、話題がどんどん膨らみ、
アドリアーノ氏やT教授のコメントも加わっていく。
気が付くと、会場はとっても賑やかで、
イタリアにいるようだった。
会の冒頭で、
私はイタリアの発音について触れたものだから、
会場となったレストランの支配人は、
大袈裟なアクセントと抑揚を加えて話し、
その、イタリア訛りの日本語に、皆は笑った。
今後、帰省の際には、
オリーブやワインの会を持ちたい、と思っている。
専門的な知識も準備しておくけど、
講座風にならず、いかに、楽しく伝えるか?
服装も風貌も、あえて、ラフな方がいい。
今までの概念が崩れ、色々な事に気づかされてます。
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