私は、サンジョヴェーゼ
両親と涙の別れをして、
アリタリアの飛行機に乗り込んだ。
一気に寒流が流れ込み、気持ちが引き締まる。
そこには、
カルメンに出てくる酒屋の女たちのような女性乗務員の姿があり、接客笑顔やお辞儀に構わず、業務をキビキビとこなしている。
日本では「お客様」扱いされていたが、
これからは、ただの客だ。
さあ、これからは自分が頼り。しっかりしなくちゃ。
ローマの到着は、夜の19時。
シエナ行きの最終バスには乗れないため、
空港近くのホテルを予約していた。
空港からホテルに電話をして、
ピックアップをお願いすると、
「君の予約は見当たらない」と言われた。
「そんな事、ないわ。フェデリコっていうスタッフが
予約を受けてくれたのよ。
メールを送信したけど、返事がなかったの。
ホテルの回線が数週間も機能しなかったんですってね。
だから、電話で予約を入れたのよ」
事情を説明しても、ホテルのスタッフは、
「予約メールがない限り、予約は成立しないし、
部屋も満室だ」と言い張っている。
こちらも負けてられない。
「なら、あなたのホテルのロビーで寝るわ。
明日の朝には出ていくから」
「それも、困る・・・」
結局、他のホテルを手配してもらい、
そこまで、送ってもらった。
車の中でも、私達は予約の件で意見を交わし合ったが、
険悪なムードになることもなく、挨拶をして分かれた。
連れて来られたホテルは、海の前!
翌朝、私は屋外でカプチーノを味わった。
「あ~、気分がいい~! 何てラッキーなの!」
これがイタリアのパターンだ。
日本にいた時は、「今晩、何を食べようかな~」
なんて想像を巡らすことが多かったけど、
イタリアでは、
「とにかく、今を、何とかしなければ!」と、
全神経が奮い立つ事が多い。
私がいるトスカーナには、
『サンジョヴェーゼ』という葡萄品種があり、
キャンティクラッシコやブルネロなど、
しっかりと美味しいワインが生まれる。
この葡萄品種は、
あえて貧しい土地を好み、根を深く張る。
土壌が、養分や水分で満たされていたら、
美味しい葡萄は成らず、
質の良いワインは生まれない。
2週間の日本での滞在で、
私は沢山の愛情の堆肥を与えられ、
これから、イタリアのゴツゴツした土地で
根を張って生きていく。
私は、サンジョヴェーゼ同様、
豊かな地では、
美味しい質には育たないような気がする・・・
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