明日の卵を皆で
1月2日から、私達は動き出した。
シエナ合唱団の責任者でありソプラノ歌手のクララと、
ブルネロの作り手を訪れた。
「シエナの中心街にある由緒ある建物で、
コンサートを考えてます。
テーマはモーツァルト。
建物の建築とモーツァルトが生まれた時代が、
同じなんです! よかったら、
あなたのワインの試飲会も、そこでしませんか?」
私達が訪れた作り手のオーナーは音楽の愛好家で、
彼の畑には、沢山のスピーカーが設置され、
モーツァルトが流れている。
「お芝居を含めた形で、
観客を惹きこむコンサートをするんです!
ワインを紹介する際、
アリアを用いながらワインの説明をしたり
色々な視点から遊べると思うんですよね!」
すると、ワイナリーのオーナーは、
「それは、面白い!」と同意してくれた。
この話は元々、シエナの元貴族で、
建物を所有する御婦人からの依頼で始まった。
「99もの部屋があるのに、空なんです。
でも、税金を払い続けなければならない。
何か、いいアイデアはないかしら?」
夫人からの相談を受け、
クララは、その建物でコンサートをすることを提案した。
ソプラノ、ピアニスト、バイオリニストは友達で呼べるし、勉強中で活躍の場を欲しがっている音楽家は沢山いる。ボランティアとして音楽家は集まる。
私もまた、ボランティアで広報として動く。
これまで、シエナの興行は、
銀行や市からの助成金を受けて成りたっていた。
しかし、ここ数年前から、全くお金が出ない状況。
そこで、私達は考えた。
音楽家が音楽を紹介しようとしても、
ワインの作り手がワインを売ろうとしても、
不動産が空いている物件を売ろうとしても、
上手くいかない。
なら、それらの具を一緒に調理して、
美味しそうな香りを漂わそう!
そうすれば皆さんが集まり、
音楽やワイン、物件が生きてくる。
私達は、最初は小さな規模から始め、
問題的を確認していきながら、
少しずつ大きく発展させ、
そのイベントを商品化していきたい、と思っている。
しかし、建物に集まり、打合せをすると、
物件のオーナーである彼女は、
「日本人で、館内にある劇場の修復にお金を出してくれる人、いないかしら? どうぞ、見つけてくださる? 」とか、
「場所のレンタル代として
週末 1,500ユーロは最低でもいただくわ」
「食べ物を持ちこまれて、
チーズなんて床に落とされたら、大変!
お掃除はきんちんとして下さいね」・・・など、
彼女の要望を遠慮なく発した。
私達は、明日の卵を優先させたいのに、
夫人は今すぐにでも、太った雌鳥を欲しがっている。
「当初、彼女から、何とかして欲しい、と頼まれたから、
音楽を無償で提供しようと思ったのに」と、
クララは落胆した。
根本的な所で意見が合わないので、
建物での興行の話はそこで終わった。
この話を、国立のエノテカに持ちかけてはどうか?
と思ったけど、経営が安定せず、イベントの話を誰にしてよいか、責任者も分からない状況だ。
イタリアは、車、ファッション、ワイン、芸術・・・
沢山の得意技を持ちながら、経済が浮かばれない。
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