ブルネロの試飲会
ブルネロの試飲会に行った。
ブルネロは、
モンタルチーノのテロワールを表現する
長期熟成型の赤ワイン。
使用される葡萄品種は、
この土地で育つサンジョベーゼ100%が原則で、
手間をかけて作られた高級ワインは、
世界中のワイン愛好家に注目されている。
約250ほどの作り手が存在する中、
モンタルチーノの地元人による蔵は、約50~60軒。
その他の作り手は、北イタリアや外国からやってきた。
ワインを愛する作り手が多いが、
ビジネスを目的に展開しているところも、結構ある。
10年くらい前だったかな?
モンタルチーノ出身のある作り手が、嘆いていた。
「ブルネロは、
葡萄の収穫年から5年後の1月1日から販売してよい
という規定がある。
もし、もっと早く販売できるようになれば、
早く現金化できて、経営上、有利だ!
4年後の販売にしよう」
という声が上がり、協会で投票が行われたとのこと。
幸い、その意見は通らなかった。
最近になって、また、違う声が上がったらしい。
「外国人(特にアメリカ)には、
飲み頃まで待つことのない
飲みやすいブルネロがうけやすい。
年によっては、
もう少し開栓まで待った方が良い出来栄えとなる。
直ぐに飲めるように、
15%まで外国品種の赤を混ぜてもよい、
ということにしては、どうか?」
幸い、この意見に対する投票も、通らなかった。
狭いモンタルチーノの土地で、
伝統派の小さな作り手は、
外国から参入してきた大手企業と常に対立している。
ブルネロは、この土地を代表する品種サンジョヴェーゼが100%でなければならない。
この事は、
「もし、長い歴史を持つ由緒正しい日本の酒蔵が、
外国品種の米を使って大吟醸を作ることになったら?」と考えてみるだけでも分かる。
飲みやすくなったとしても、
郷土の味とは言えなくなる。
伝統を守る、と言っても、
昔と全く同じ条件で葡萄が作られているのではなく、
質の向上に向けて、全体的な進化もある。
フィレンツェ大学はサンジョヴェーゼの研究に取り組み、現在、サンジョヴェーゼには118のクローンが存在する。
より、果実が凝縮され、アントシアニンが出やすく、
粒の小さな方向へと向かっている。
猛暑が訪れるようになったトスカーナ。
昔のクローンでは、
熟れるタイミングが早すぎてしまうので、作り手は、
ここ近年の気象にあったクローンの接ぎ木に取り組み、
質の安定を図る。
試飲会では、昔ながらの典型的なブルネロの色、オレンジがかったものから濃いルビー色のブルネロまである。
会場内で出会ったイタリア人のF。
彼は、シエナの知られたエノテカで働くソムリエにも関わらず、「キヨミ、色が薄くて、もう、酸化してしまったブルネロも沢山みかけたよ」と言って、フランスの新樽を使った超モダンなブルネロを崇高していた。
伝統的なブルネロの作り手は、
バリックの新樽には絶対に手をださない。
ブルネロの味は、どこから来ているのか?
それは、葡萄畑から来るものであって、
木の香りが生きた小樽の影響を受けると、
葡萄が分かりにくくなる、という理由からだ。
しかし、バリックの新樽を使った作り手に話を聞くと、
彼らなりに、
相当の拘りと愛をもってワイン作りに励んでいるので、
善し悪しを図ることは出来ない。
ブルネロを愛する消費者の中には、
伝統を味わいたい、という人、
ワイン作りに拘るマエストロのオリジナル的作品を味わいたい、という人、または、世界的に話題になっているブルネロに、私も触れてみたい!と好奇心を満たしたがっている人等・・・、沢山の視点がある。
人で溢れる試飲会場を抜け、葡萄畑に場所を移した。
本来、3月の工程である剪定は、
暖冬の為、既に終わっており、
土に窒素を供給するためのFavina(ソラマメ)が良く育っていた。
今後、私の意見も変わってくるかもしれないけど、
ブルネロ、そしてキャンティクラッシコに関しては、
グラスの向こうに畑が見えるような、
作り手の愛情、そして葡萄が育つ土地への誇りが感じられるものを紹介していきたい、と思う今日この頃です。
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