グレーゾーン
昨夜から降り続く雨、うっすらと光を放つ灰色の朝。
このトーンのお陰で、
昨夜観た映画「自転車泥棒」のシーンが今も尚、
鮮明に浮かんでは、心に染みわたる。
戦後の貧困生活を送る一家。
父親は2年通った職安から
やっと仕事を貰うことが出来た。
街中の壁にポスターを貼る、という仕事で、
自転車が無いとその仕事を手にすることは出来ない。
布団を質屋に入れて自転車を手にするが、
仕事の初日に盗まれてしまう。
生きるため、6歳の息子と自転車を探し回る、
というストーリー。
中でも2つのシーンが強烈に残る。
一つはレストランのシーン。
疲れ果て
「腹が空いては何も始まらない。食べようか・・・」
と入ったレストラン。
ピザを食べようと思ったけど、そこは中流階級の通う店で、安いピザはメニューになかった。
少しためらった父親は開き直り、
「今日は飲もう!飲んで忘れよう!
お前も沢山 食えよ!」
と言って、6歳の息子にワインを注ぐ。
「お母さんに知られたら、怒るだろうな~!」
と言う父に、笑顔で頷く息子。
もう一つのシーンは、ラスト近く。
息子にお金を渡し、「お前はバスで帰れ」と言う父。
息子はバスに乗り遅れ、振り返ると、
盗んだ自転車に乗った父が大勢の男に追いまわされ、
捕まる光景を目にして、
「パパ、パパ・・・」と泣き叫ぶシーン。
私は、映画やテレビドラマが嫌いだと思っていた。
でも、昔の映画を観るようになって、
作品によるものだと分かってきた。
パトリッツィオが最近読んだ本には、
こんなシーンがあると言っていた。
「そこらへんに居そうな老人が主人公なんだ。
彼が通うバールには食品や生活雑貨も売っている。
そこにはいつも、女がやってくる。女は、浮浪者さ。
老人は、そこに居合わせる奴を巻き込んで、
店員と彼女の間に立ちはだかるんだ。
彼女にとって、最も難しいシーン、そう、
食べ物を懐に収める瞬間を手助けしてやるのさ」
パトリッツィオは、この老人と友達になりたい、と言って笑った。
気がつくと、昔に比べて規制が増えている。
昔の映画では、お酒やタバコのシーンも多く、
親や学校の先生が、子供を殴るシーンもよくある。
でも、それは決して、暴力ではない。
規則正しく生きる人間は立派だけど、
生きる上での応用力に欠けた部分もある。
「善か悪か?」「白か黒か?」ではなく、
それぞれの人間が自分の行動に責任を持つ、
状況に応じて考える、とう前提の
『グレーゾーン』がもっとあってもいいかな!?
と思える、今日この頃です。
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