美味しい珈琲タイム
「エリーナ、私。今、バスの中なの。
予定より早く到着してもいいかしら?
バスを降りたところのバールで朝食をとってから、
あなたの家に向かうわ」
「それだったら、私の家に直行して頂戴!
とっておきのチョコレートがあるの!
美味しい珈琲入れるから、ねっ!」
玄関のベルを鳴し、彼女の真丸い顔が現れた途端に、
私の気持ちはまるでチョコレートでコーティングされたように甘く縁取られた。
「チャオ、キヨミ!」
「チャオ!エリーナ!」
「久しぶりだわ。この部屋に訪れるの。
最近、ずっと外で会っているものね!」
「あら、じゃあ このテーブルクロス、初めて見るわね。
アレッシオ(息子)が作ったの。
ネズミがかじるチーズをイメージしたんですって!」
オレンジ色の紙の上に、
丸い型がくり抜かれた黄色の紙が重なっていて、
その上に、透明のビニールが敷かれている。
「学校で習ったの?」
「そうじゃないの。
あの子、こういうアイデアが好きなのよ!
そうそう、最近、猫のお城を完成させたの。
ちょっと、来て」
アレッシオの部屋に入ると、
足の踏み場もないくらいに段ボールが敷かれている。
「ここが玄関。
そして廊下をつたって部屋に入るんですって。
でも、うちの猫、全然、相手にしてないわ!」
身の回りにある何気ない光景でも、彼女の息がかかると、魔法がかかったかのように光が差す。おもちゃの行進曲でオモチャ達が擬人化されていくように・・・
珈琲が湧いたので、テーブルに戻った。
彼女が私にお披露目したがっていたチョコレート、
それは、子供の拳骨くらいの大きさがあり、
中身まで ぎっしりとナッツとチョコレートが詰まっていた。
その後、ウクライナの伝統のお菓子を頂いた。
とてもややこしい名前を持つゴマ風味の珍しい触感で、
砂糖なしの珈琲とよく合った。
お喋りが湧いていたけど、
パトリッツィオが迎えに来くてれたので、
日を改めて、また訪れることにした。
パトリッツィオは、
私とエリーナの仲をとても尊重してくれる。
「朝、仕事で行くところもあるけど、
エリーナにも会いたい」と言ったら、
「だったら、朝、彼女の所で珈琲を楽しんで、
その後、仕事をすればいい。
車で迎えに行くよ」と提案してくれた。
私はイタリアに来てから、素敵な友達に恵まれた。
皆、余計な装飾がないピュアな性格で、
独自の視点を持ち、感性がとても豊かだ。
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