おっちゃん教授
仕事を終えた移民で混み合うバスの中、
プロフェッソーレ(教授)を見つけた。
私達は目が合うと、
まるで、待合せをしていたかのように、
自然に歩み寄って、会話を始めた。
「その後、
あの青年はバルセロナからハガキをくれたよ!」
2か月くらい前の事。
リュックを担いだ青年が、英語で運転手に話しかけているけど、運転手は英語が分からない。
思わず私は「どこに行きたんですか?」と声をかけた。
青年が差し出すメモには、
私の知らない住所が書かれている。
咄嗟に、近くのイタリア人に声をかけてみた。
「すみません、この住所、知ってます?」
すると、イタリア人は、
「この住所までは、バスが延びてない。
レプブリカ広場で降りてから、
丘陵地帯に向かって2~3キロの道のりを歩くのさ。
私も丁度、この広場で降りるんだ。
一度、家に戻って、車を出すよ」と引き受けてくれて、
私も青年も喜んだ!
この日をきっかけに、バスで、
このイタリア人を見かけると会話をするようになった。
彼は、シエナ大学で経済を教える教授とのこと。
この日、
私は買ったばかりのFabrizio de Andreのスコアを見せると「彼の曲をジャズでアレンジするピアニストがいるんだ。ユーチューブでDANILO REA, 続けて Andre’と入れてみな」と教えてくれた。
今朝立ち寄った銀行の話をすると、
「私は、この銀行を使ってるのさ!」といって、
ING DIRECTと書かれたカードを見せてくれた。
海外送金ですら、手数料がかからない、
オランダのオンラインバンキングだそうだ。
一般的に、弁護士・医者・大学教授というと、
顎鬚を生やし、良質の生地のジャケットを纏い、
どことなく威厳を放ったイメージがある。
でも、この教授は、高級車のハンドルの代わりに、
移民に混じって、バスの手すりを握る。
そして、18時にして既に、息が酒臭い。
困った旅行者を助けてあげる情を持ち、
音楽と酒を愛するおっちゃん教授。
「あのシエナの銀行は泥棒だ!
俺は、2年前にケンカをして別れた!」とか、
「あのピザ屋には、味の分からん奴のみが集まる。
行く価値ないぞ!」など・・・
教授は穏やかながら、ストレートな意見を述べる。
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