ココ・ファーム・ワイナリー
イタリアでの留学生活の中で、
お金に余裕のない時期があった。
1日4ユーロ以上は使えないので、
バールでコーヒーを飲むこともせず、
生活のやりくりを工夫していた。
イタリアでは、そういう人は沢山いるし、
ニュースでも、貧困生活をどう乗り切るか?
みたいなテーマがよくあったので、
そんな私の生活を、普通に感じていた。
丁度その頃、日本への帰省の際に、
穴の開いた靴下をはいて帰った。
家に帰ると、父や母が、何でもやってくれる。
母は、洗濯ものをきちんとたたんで、
枕元に置いてくれる。
直ぐには気が付かなかったけど、
靴下を見たら、穴の部分が縫製されていた。
母は、私の知らない間に縫って、
その事に触れることなく、そっと枕元に置いてくれた。
嬉しかった。
「穴が開いてたから、捨てたわよ」と言って、
新しい靴下を買ってくることも出来る。
でも、お母さんは、お母さんの価値観をもって、
私の世界の私物を一方的に変えさせることなく、
私の状況まで降りて来て、私の世界を尊重してくれた。
昨日は、足利市にある
「ココ・ファーム・ワイナリー」を訪れた。
障害をおった生徒が暮らす施設「こころみ学園」の生徒が葡萄作りに励み、隣接されたココ・ファーム・ワイナリーでワインが作られる。
生徒たちは、私たちと少しだけ違った状態で生まれ、
限られた環境に生きている。
学園とワイナリーは、そんな彼らの立場にたって、
一人一人に仕事を与えている。
集団生活が苦手な ある男性は、
葡萄畑を見下ろせる丘の頂上にいつもいて、
缶をたたきながら、カラスを追い払っている。
彼曰く、昼食をとっている間、カラスが来てしまう、
ということで、昼休みもそこを離れようとしない。
だから、スタッフが彼にお弁当を届けている。
今まで、幾つかの大手のワイナリーも視察してきた。
事業として成り立たせるため、販売計画があり、
ある一定の生産本数を安定的に確保しなければならないので、
どんなに天候が悪くても、美味しいワインを作り出せる。
どんな天候であろうが、毎年、同じ味だ・・・
一方、イタリアの小さな作り手、そして今回訪れた
こころみ学園&ココ・ファーム・ワイナリーは、
毎年のワインの出来や生産量が違うし、
彼らは、それが当然だと思っている。
経済社会ではなく、人間社会の営みがそこにある。
人に、そして自然に対しての尊重がベースにある第一次産業を、これから、もっともっと、応援していきたい!
ココ・ファームさんのホームページ
http://www.cocowine.com/
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