なんとか なっちゃう!
アパートの門を出たと同時に、
バスが澄ました顔して通り過ぎて行った。
「やっちゃった~、どうしよう?
お客様との待合せまで、あと10分。
次のバスは1時間後。歩くと30分以上はかかるしな…」
不思議なことに、焦りは湧いてこない。
頭の中で、色々な案が浮かんでは消え・・・
手っ取り早い方法として、
ヒッチハイクをすることにした。
親指を立てて、向ってくる車の運転手を見つめ
「ペルファヴォーレ(お願いします)、止まって!」
と言ってみる。
昼の田舎道を走行するのは、お年寄りが多く、
誰も目を合わせようとしてくれない。
そんな中、1台の白いバンが止まった。
中には、浅黒くて体格のよい外国人風の労働者がいる。
「・・・ノー、グラッツェ(何でもないです)
ごめんなさい・・」と断り、
ヒッチハイク作戦は無理かな~と諦めかけた頃、
アパートの敷地から作業車が出てきた。
(何やってんの~)とでも言いたそうな表情を浮かべ、
車を止めるアンドレア。
私は助手席によじ登り、
「お願い!アルビアの踏切まで連れていって頂戴!」
と告げ、それから、ボリューム大音量で、
感謝の言葉を連発し続けた。
穏やかなアンドレアは、そんな私の勢いに押されながら、快く運転してくれた。
私のアパートがある場所は、大家さんのお店の敷地でもある。
そこで働くアンドレアとは、いつも
「チャオ!」の挨拶を交わすのみだったけど、
お蔭で話が出来た。
自分が出来ない事は、他の人の協力を仰ぐことになる。
そういうバタバタから、
今日のエンジンが吹いたりする。
日本での帰省中も、飛び乗った山手線の中で、
「すみません、次の駅はどこですか?
私、有楽町に行きたいんですけど?」
と尋ねると、青年は、
「これで大丈夫ですよ。有楽町まで、19分です」
と教えてくれた。
そして有楽町に着くまで、
日本vsガーナのサッカーの試合中継について雑談をし、「さよなら~」と、挨拶をして別れた。
道を尋ね、挨拶を交わす度に自分がチャージされていく、そんな感じを何度も覚えた。
シエナでバスを逃した日、携帯をうっかり家に置き忘れ、また、日本での帰省中も、私は携帯を持っていなかった。
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