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2013年8月15日 (木)

成長日記

近所の葡萄畑を訪れた。

「オジサン、収穫はいつ頃からでしょう?」

「あと、20日くらいしてからかな?」

「その時、
 ワインに興味がある日本人を連れて来ていいですか?」

「ああ、いいとも!」

「あ~、でも、その頃
 私はバカンスでシエナを離れるんだった」

「そしたら、キヨミの為に、葡萄を残しておくさ!」

葡萄畑に足を踏み込むと、
同じ畑の、同じ列の、同じ樹から成る房同士なのに、
色付の過程に差が見られる。

日照量と土の養分が同じなのに、どうしてだろう?

熟した葡萄を食べてみると既に甘く、
果汁の糖分で手がべたついた。

そうかと思えば、
すぐ近くにある粒は、青リンゴのように堅い。

私が小さな作り手を好む理由の一つに、
彼らは葡萄を一つ一つ確認しながら収穫をする、
という点が挙げられる。

熟成具合に差があるので、
同じ葡萄の列を何日かに渡って取りかかる。

でも、大手ワイナリーとなると、
丁寧に手で摘んでいたら時間がかかり過ぎて
葡萄が熟れ過ぎてしまい、
ベストのタイミングを逃してしまうので、
機械で一斉に取り組むしかない。

そうなると、葡萄の房の状態を確認するどころか、
虫や葉っぱも一緒に取り込んでしまうことになる。

収穫時期、大手ワイナリーの畑を通りすぎると、
マイクロバスで運ばれてきたアフリカ人が、
機械を使って収穫をしている光景を見たこともある。

そういうワイナリーに限って、
素晴らしい広告をうつものだから、閉口してしまう。

天気予報や自然災害など、
自然界の現象を100%予測できないように、
葡萄の成育結果も予測することは出来ない。

昔、ブルネロの作り手を訪ねた時、
「日当たりのよい1角を、1級用のワイン、
 そして、別の畑を2級用のワインにあてがったけど、
 年によっては、2級用の葡萄畑の出来のほうが
 良い場合もあるんだ」

と言っていたし、

キャンティクラッシコの作り手は、
「1ヘクタール当たりに植える葡萄の木を
 少なくしてるんだ。
 旱魃でも、全体の葡萄に適度な水分が渡るようにね。
 そして他の作り手より瓶内熟成の時間を多くとる。
 タンニンが落ち着いてからじゃないと、
 出荷できないよ」

と言っていたのを思い出した。

温暖化で猛暑と冷夏が繰り返されたり、
旱魃や多雨の年もあったり、
雹の通り道になってしまうこともある。

今年、その畑の自然の状況、現象に応じて、
農夫がどんな工夫を働きかけたのか?

その取り組みがあって、美味しいワインが誕生する。

自然と農夫のコラボレーション、そして、
消費者の理解があって、ワインの味が更に深まる。

有名な評論家が下す点数、協会が下す
ヴィンテージチャートの星の数は参考になるけど、

心に刻まれる★の数が多いワイン、
そんなワインが美味しいような気がしてきた。

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