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2013年7月26日 (金)

海に行く途中、
見知らぬ街のバールに立ち寄り、朝食をとった。

「ごめんなさいね。今はこれだけしか残ってないの」

一人で沢山のお客をさばき 忙しいにも関わらず、
店の女性は、気持ちを込めて申し訳なさそうに言った。

「じゃあ、俺はチョコレートのコルネット」

「私は、インテグラーレのナッツのパンにするわ。
 そして、カプチーノを2つください」

店の女性は、ショーウインドウからパンをとると、
まずは、パトリッツィオに渡した。

「あらっ、ゴメンなさい!
 本当は女性のほうから渡さなければならないのにね」

「あ~、そんなのいいんです」

そして、カプチーノには、
チョコレートでト音記号を描いてくれた。

通常、朝のバールには男性客が多いが、
ここは女性客で賑わっている。

「最高に親切なバールだな!」

「本当! イタリアでNo 1だわ!」

私達は、お店の空気までも じっくりと味わい、
海に行く時には必ずこのバールに立ち寄る事を決めた。

海に到着すると、駐車場係の若い青年が、
「ボンジョ~ルノ、Ragazzi(ラガッツィ) !」
と挨拶してくる。

Ragazziとは、青少年をさす言葉。

「俺たちに向かって、Ragazziだなんて、嬉しいな!」
とパトリッツィオ。

朝の海はヒンヤリしているけど透明度が高くて美しい。

午後4時を過ぎると、それまでブルーのビー玉のように輝いていた海は銀色へと変わり、その姿にうっとりと心を奪われた。

私は基本的に悲観主義者で、
限界の影を薄らと感じながら生きている。

この素晴らしい海の色は、この瞬間であって、いつもとは限らないし、此処にいつも来れるとも限らない。

私がいつも健康とは限らないし、
パトリッツィオがいつも居てくれるとも限らない・・・

限定期間の中で、今を捉えるから、
全身で「今」を感じたい。

帰りの車の中では、
今日の幸せのボリュームが多すぎて、心におさまらず、
涙となって零れて落ちた。

時々、感性の波が高まると、こういう現象になる。

それを承知のパトリッツィオは、私の膝を軽く撫で、
なんとも穏やかな顔で、運転を続けた。

40代半ばに差し掛かり、
私流、生き方のレシピが分かってきた今日この頃です。

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