夏の夜の畑
「それでは月さん、後はよろしく頼みますよ~」
サービス精神旺盛な夏の太陽は、
今日も十分に地上を照らしてくれた後、
21時になって ようやく、丘の向こうに消えていった。
バトンタッチされた月が、ゆっくりと輝きを増しながら、
火照った空気を冷やしていく。
日中、陽の光をたっぷりと浴び、ブドウ糖を合成した向日葵の葉っぱ達は、このヒンヤリとした空気の中で、大きく呼吸をしながらズンズンと成長していく。
大きな黄色い笑顔の舞台準備は、
着々と進んでいるようだ。
(葡萄畑は、どうなっているのかしら?)
畑に足を踏み入れると、向日葵の次に出番を控えた葡萄たちは、まだ、人前に姿を現したくないらしく、葉っぱに隠れて、そっと房の形を整えている。
とうとう真っ暗になり虫の声しか聞こえてこないけど
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