モルディッキョ
久しぶりに、モルディッキョ(噛みつき君という名の猫)がいるバールに行ってみた。
「オバサン、久しぶり~!」
「あら、まあ、久しぶり!」
「モルディッキョは元気ですか?」
「元気だよ! 部屋で寝てるょ」
そういって、オバサンは、
バールに隣接した家に招いてくれた。
低い屋根の屋内は、寝室、キッチン兼作業場、そして沢山の箪笥が並んだ3つの部屋に分かれている。
バールに場所を移し、私はカウンターに座った。
子供たちが駆け足で入ってきて、
「オバちゃん、ゲームしたいから、両替して!」
と2ユーロコインを渡すと、
オバサンは、小銭を沢山渡した。
子供たちが、その小銭を数え始めると、
「ちょっと、あんたたち、信用しないのかい!」と、
急に魚の様な表情になって、お腹の底から太い声を発したものだから、その豹変ぶりに笑ってしまった。
頼んだコーヒーがカウンターに置かれ、
砂糖の袋をちぎる その指先をオバちゃんはじ~っと凝視して、また魚顔に豹変して発した。
「全部、使い切るんだよ!捨てるものなんて、何もないんだから!」
本当は半分残したかったけど、
小さなコーヒーカップに砂糖を全部入れて飲み干した。
カップの底に溜まった砂糖もスプーンですくって舐めた。
いつもだったら冗談で介入してくるパトリッツィオも、
オバちゃんとの距離が測れず少し離れて無関心を装っている。
モルディッキョは年をとって噛みつかなくなったけど、
その代り、オバちゃんは噛みつくようになってきた。
カウンターに肘をついてお客の話を聞いているうちに、
いびきを立てていたオバちゃん・・・
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