私の先生
主治医を変えてみた。
診療所の待合室にはどんどん人が溜まっていく。
このフロアーには、いくつかの部屋があって、この日は、3人の内科の先生がいるらしい。
私がお世話になるのは、ビアンキーニ先生。
この先生を待つ患者は、私を含め、二人だけ。
番が来て部屋に入ると、デスクには、タバコの煙がツ~っと立ち上っている。
「ちょっと待って~」
レトロな感じの先生は、
コンピュータに向かって、何やら一生懸命の様子。
「はい、お待ちどうさん」
「先生、私、初めて来ました」
「じゃ、まず、個人データを入力せねば・・・」
そう言って、私の名前や生年月日、税金支払証明番号などを入力し、送信キーをたたくと、コンピュータは固まった。
「先生、きっとこのコンピュータ、日本語 知らなくて悩んじゃってます・・・」すると、先生はしゃがれた声で笑い、また、一から入力し始めた・・・・がしかし、また固まった。
「オ~何てこったい!
コンセントを抜いて、立ち上げ直しだ…」
3度目の正直でやっと送信できたものの、
今度は、私のデータが複数、保存されてしまっている。
「mu…削除せにゃ…」
「先生、何だったら私、双子になりましょうか?」・・・
この先生につく患者がいない理由が分かるような気がした。でも、その道で浮いているような、癖のあるタイプを面白がる私は、この先生との出会いにワクワクする!
「先生、もうすぐ大事な出張があるんですけど…」
と訴えると、「大~丈夫!それまでには、治る治る!」
とはっきり言われ、もう既に、治ったような気分になった!
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